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第534話

翌朝、城崎に抱きしめられたからか、とてもよく眠れた。 もちろん起きた時には城崎はいなかったけど…。 ダイニングにおにぎりとともに、綺麗な字で置き手紙が書いてある。 『先輩、おはようございます。いつも夜食ありがとうございます。朝ご飯、しっかり食べてくださいね。あと、今日は絶対先に寝てください。』 朝帰り前提なのがブラック過ぎて怖いけど、とりあえず城崎が作ってくれたおにぎりを食べて家を出る。 いつも通り出勤して仕事して、無理矢理にでも眠って仕舞えば、明日はずっと城崎と一緒だ。 カタカタとパソコンを打っていると、ちゅんちゅんがキャスターを滑らせながら俺に近付き、デスクにこてんと頭を置いた。 「やっぱり城崎さんいないと寂しいっすね〜。」 「おい!バカ、ちゅんちゅん!」 追いかけるように涼真が来て、ちゅんちゅんの頭を叩く。 「え、なんすか、柳津さん?!」 「綾人は今ナーバスなんだよ!城崎の話題出すなっての、このバカ!」 「はっ!!ご、ごめんなさい、望月さん!!」 「ぷっ…、あはは!」 本人たちは真剣なんだろうが、コントみたいになっていて思わず笑う。 涼真とちゅんちゅんは、ぽかんと俺をみて固まっていた。 「綾人、ナーバス期終わったのか…?」 「ナーバス期ってなんだよ?」 「いや…、最近魂抜けたみたいに元気なかったからさ…。」 「…ふふっ、分かってる分かってる。ごめんな、心配かけて。」 涼真の優しさが身に沁みる。 長年一緒にいるだけあって、俺の機嫌とかすぐ分かっちゃうんだもんな。 「城崎さ、今日で忙しいの終わるんだよ。」 「あ、そうなのか?」 「ん。だから明日は一緒に寝るんだ。来週は一緒に帰れるし、月末はデート。だから俺、今は寂しいよりも楽しみが勝ってんの。」 「それでそんな機嫌いいのな。よかったじゃん。」 俺がニコニコしていると、涼真も安心したように笑っていた。 ちゅんちゅんが「はい!」と手を挙げる。 「来週から城崎さん帰ってくるんすか?!」 「いや、まだ向こうだよ。」 「さっき一緒に帰るって…」 「定時で終わって、俺のこと迎えに来てくれるんだって。プロジェクト自体が終わるのは月末だと思う。まぁ、あと一週間くらいの辛抱だな。」 「てことは、また一緒に仕事できるのは4月からってことっすね〜。楽しみ!」 「ちゅんちゅんはうかうかしてられないぞ?新人きて、おまえは二年目になるんだから。みんなの目が離れるよ?」 「はっ…!!嫌です!やっぱり4月こないで!!」 ちゅんちゅんは喜んでいたと思ったら、突然青褪めて頭を抱えていた。 俺は新人ってよりも、異動してくる人の方が気になるな。 だって、指導係を任されているわけだし…。 歳が近いって言ってたから、そんなに指導することもないと思うけど。 気が合えばいいなぁ。 「ちゅんちゅんももう先輩になるのかぁ。」 「それ以上言わないでください!!頭痛い!!」 「よっ!雀田先輩っ!」 「やーめーてー!!」 俺と涼真にイジられて、ちゅんちゅんは嘘泣きしながら逃げる。 わいわいしながら仕事をしていたら、いつも長く感じる時間が少しだけマシに感じた。

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