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第538話
「じゃあここで。」
「いってらっしゃい。頑張って。」
「先輩も。帰り迎えにいくので、待っててくださいね。」
同じ駅で降りてすぐ、城崎と別れる。
O社はここから別の電車に乗り換えて数駅行ったところだ。
城崎の姿が見えなくなるまで見送ってから、俺は会社に出勤する。
途中までだとしても、城崎と一緒に出勤したのが久々で、なんだか朝からテンションが高かった。
「おはようございます♪」
「おぉ。ご機嫌だな、望月。」
「あ、部長…!おはようございます。」
「4月から一人でも動けるように練習がてら、今日から主任業務に切り替えてもらうぞ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
今日は一日、今の主任に付いて業務を覚える作業だった。
現主任は4月から別の支社に異動だ。
だから俺が引き継ぐわけだけど…。
「覚えること多すぎ…。」
「まぁまぁ。頑張れよ。」
「おまえ他人事だからって…。」
「それよりさきちゃん弁当復活してるじゃん!おめでと。」
昼休み、食堂で飯を食べる。
俺は朝から城崎が作ってくれたお弁当。
涼真も彼女さんに作ってもらったお弁当を広げている。
「お疲れ様で〜す。えっ、二人ともお弁当なんすか?!」
「あ、ちゅんちゅん。お疲れ。」
「いいな〜。俺もお弁当作って欲しい…。」
「ちゅんちゅんの彼女、料理苦手なんだっけ?」
ちゅんちゅんが食堂の定食をお盆に乗せて、俺たちの向かい側に座る。
そういえば、前に彼女が料理に関してはてんでだめって言ってた気がするな。
涼真、よく覚えてんなぁ。
「そうなんすよ!もうちょっと朝に余裕あれば、俺が作るんすけどね〜。」
「それはちゅんちゅん次第じゃねえの?」
「朝は苦手なんです!!」
雀って名前に入ってるくせに、朝は苦手らしい。
そこがまたちゅんちゅんらしくて面白いな。
「望月さんの昼食が弁当に戻ったってことは、城崎さんは予定通り、忙しさのピーク乗り切ったんすね!」
「うん。今日から一緒に帰れるんだ。」
「それで朝から機嫌よかったんすね〜!」
「部長にも言われた…。俺、そんなに分かりやすい?」
「はい。俺でも分かるくらいには分かりやすいです。」
「マジかぁ…。」
俺ってそんなに顔に出るタイプだったっけ?
まずいまずい。
みんなは俺と城崎が異常に距離感近いのとか見慣れてるから、付き合ってるかなんて聞かれたことないけど、4月入職の人に城崎との関係疑われないようにしないと…。
それに、久々に一緒に働いたら、今日みたいに顔に出ちゃうかもだし…。
「気をつける…。」
「まぁでも、綾人は元々顔に出やすいタイプだし、今更治すの無理だろ〜。」
「え、嘘?!昔から?!」
「気づいてなかったのかよ。ウケる(笑)」
涼真にそう言われ、俺はぐったりと肩を落とした。
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