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第540話
あんなところやこんなところまで、満足するまで触れ合ったあと、お風呂に入って汗を流して、リビングで城崎が夕食を作っているのを見つめる。
「なんか手伝おうか?」
「お気持ちだけいただいておきますね。もう遅いので、簡単なものですけど、どうぞ。」
「美味そ〜!」
「味噌ダレチキンとささみの磯辺揚げです。」
今日はお手軽スピード鶏料理。
城崎の料理のレパートリーには毎度感服する。
「美味い。」
「よかった。お味噌汁も作ったのでよかったら。」
「やった〜!ありがと、城崎。いい嫁になるなぁ。」
「先輩のお嫁さんしか立候補しませんけどね。」
「俺のに決まってんだろ。」
俺に城崎は勿体無いと思う反面、城崎が他の人と恋人になるなんて絶対に嫌だ。
ぎゅっと手を握ると、嬉しそうに俺の頬にキスをする。
「先輩も俺以外の人のところに行っちゃダメですよ?」
「行かない。」
「俺より先輩の方が心配なんですからね?女性も対象な分、俺なんかより敵多いんですから。」
「俺の場合は男は城崎しか考えらんねぇから、敵の数は一緒だよ。」
「でも今更女性なんて抱けないでしょう?」
「なっ…?!」
今すげー屈辱的なこと言われた気がした。
男としてのプライドが…。
「抱けるし…!!」
「勃つんですか?」
「っ!!!」
半分意地で言い返すと、とんでもない返し。
ば、馬鹿にしてる?!
「勃つもん…。」
「え…。」
「バカ!城崎のバーカ!!」
「嘘だって。先輩、ごめんなさい。」
「いいもん…。俺だってまだ女に勃つもん…。」
拗ねて、ただの強がりでそう言った。
城崎の言う通り、もう女性には勃たないかもしれない。
最近どんな人を見ても城崎ほどの魅力は感じないし、エッチするのは城崎しか考えられない。
城崎と別れたあとの想像を一度したことがあるけど、俺はずっと未練たらたら城崎のストーカーする未来しか見えなかった。
だから本当に、男としてのなけなしのプライドで言っただけだ。
「先輩、ごめん。俺嫌だ。先輩が俺以外に興奮するの見たくない。本当にごめんなさい。」
「バカ…。」
「ごめんね。女の人は対象外だって言わせたくて、意地悪言った。俺だけしか見ないで…。ごめんなさい。」
「………俺もごめん。強がっただけ…。俺もう多分、城崎にしか反応しないと思う…。」
「うん。それがいい…。」
「責任取ってくれる?」
「喜んで。」
指を絡めて手を握り合いながら、料理なんか忘れてキスに没頭する。
お互いの腹の虫が鳴いて、思わず顔見合わせて笑って、ご飯食べたあとは寄り添って眠りについた。
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