545 / 1069

第545話

家に帰ってから、二人ともたがが外れたようにお互いを求め合った。 城崎は俺を安心させるためだったのかもしれない。 城崎の腕に抱きしめられると安心して、城崎の肌と触れ合うと心地良くて、城崎に愛されると満たされた。 いつも以上に愛撫はしつこくて、でも何だか今日はそのしつこさが寧ろよかった。 数度目の絶頂を迎え、全身から力が抜ける。 城崎は上半身だけ起こして、ペットボトルの水を丸々飲み干していた。 上下する喉仏にうっとりと見惚れていると、城崎が俺を見下ろす。 月明かりに照らされた顔は、美術品のように綺麗だと思った。 「好き…。」 「俺も大好きです。愛してる。」 「どうやったら、俺だけの城崎になってくれる…?」 「もうとっくに先輩だけのものです。」 甘えるように擦り寄ると、優しく髪を撫でられる。 俺にだけしか向けない優しい目、優しい声。 城崎にとって、俺が特別だということはわかってる。 わかってるのに、年甲斐もなくあんなことで泣いてしまった。 「みっともなく嫉妬してごめん…。」 「ううん。全部過去が消せたらいいんですけどね…。不安にさせてごめんなさい。」 「謝んなよ…。城崎が今は俺にだけ向き合ってくれてるって、ちゃんと分かってるつもりなんだ…。でも現実見るとな…、困らせてごめん。」 「先輩こそ謝らないでください…。」 体を起こして、城崎の首に腕を回して体を寄せ合う。 キスをするたび、喜びで身体が震えた。 「またあんな思いして欲しくないし、Aqua行くのやめませんか?」 「え…?」 「先輩と出会うまで、あそこで引っ掛けてたんで…。今後も今日みたいなことあるかもしれないですし…。」 「でも麗子ママに会えなくなるよ?」 「俺は誰より先輩を優先したいから。先輩が嫌な思いするなら、行かなくてもいいんです。」 Aquaには俺なんかより長い付き合いの人がたくさんいるはずだ。 麗子ママ、倉科さん、それに新田さんとだって、Aquaで知り合ったって言ってた。 もちろん、今日みたいなこともあるかもしれないけど…。 「城崎の大事な場所、なくしたくない。」 「先輩…」 「城崎が俺を思ってくれてるように、俺も城崎のことすげー大事だよ。だから、城崎が今まで思い出作ってきた場所、俺のせいで行けなくなっちゃうのは嫌だ。」 そう伝えると、城崎はぎゅっと俺を抱きしめた。 力強くて、苦しいくらい。 大好きって伝わってくる。 「先輩…っ、愛してる…」 「ふっ…、さっき聞いた。」 「うん。でも何回言っても足りない…。」 「城崎、わがまま言っていい?」 「何でも聞きます。」 即答。 城崎が真っ直ぐ俺を見つめてくるから、俺は城崎の太腿に股を擦り付けた。 「もっかいシよ…?」 「…っ?!?!か、身体に負担が…」 「大丈夫。今日は繋がったまま寝たい気分なんだよ。」 「わ、かりました…」 城崎は優しく、ガラス細工を扱うみたいに丁寧に俺に触れ、俺をたっぷりと満たしてくれた。

ともだちにシェアしよう!