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第547話

城崎に続いてキッチンへ向かい、コーヒーメーカーを起動する。 「葉月くんも飲む?」 「飲む〜。ブラックね。」 「大人だねぇ。」 「綾が子供舌なんじゃない?」 「………」 都合の悪い質問には無言を貫き、珈琲を3杯淹れる。 俺のだけ、いつものようにミルクや砂糖を加えて。 隣では城崎が手際よく朝ごはんを作っていた。 「何作ってんの?」 「ベーコンエッグ。トースターでパンも焼いてるから、バターたっぷり塗って熱々の食べましょう。」 「やった〜。」 「兄貴、俺のは?」 「はいはい。作ってるよ。」 城崎はなんだかんだ面倒見がいい。 さっきまで帰れと言ってたくせに、葉月くんに言われるより先にベーコンエッグ3つ作ってるの、俺は見てたもんね。 弟思いの優しいところにキュンとして、ぎゅっと腰に手を回す。 「どうしたんですか?」 「好き〜。」 「…っ!俺も好きです。」 「ん。」 イチャイチャしていると、一足先に席に着いてる葉月くんがぷぅーっとむくれていた。 「二人でイチャイチャしないでくれませんか〜?」 「いいだろ。俺と先輩の家なんだから。」 「俺お客様なんですけど〜。」 「呼んでねぇよ。休日くらい俺と先輩二人きりにさせろ。」 「仕事終わりに来たら、仕事終わりくらい先輩と二人きりで休ませろって言うじゃん。」 「言うけど。なんか文句あるか?」 やっぱ仲良いでしょ。 いや、たしかに喧嘩はしてるんだけど、本当に仲悪かったら口聞かないだろうし、そもそも家に来ないと思う。 城崎の腰に手を回したまま、ベーコンエッグができるのを待っていると、城崎がフライパンに蓋をして振り返った。 「可愛いからキスしていいですか。」 「ん、いいよ?……ぁ、んっ」 当たり前じゃん、と言おうとした口はすぐに塞がれた。 ちゅるりと舌が入ってきて、絡まって、解ける。 朝から腰が砕けそうになるくらい熱烈なキスをされて、キスの後も城崎に寄りかかっていると、葉月くんが羨ましそうな顔でこっちを見つめていた。 「いいなぁ。」 「やらねーぞ。」 「綾可愛い。エッチな顔してる。」 「見んな。」 グイッと胸元に引き寄せられて、視界が城崎の胸でいっぱいになる。 恥ずかしくてプシューっと顔から湯気が出ると同時に、ベーコンエッグもちょうど出来上がったらしく、焼きたてのトーストとともにお皿に盛った。 「いただきまーす。……ん〜、うまっ!」 いの一番に葉月くんが出来立てを食べて、感想を言った。 俺と城崎も隣同士でダイニングに座り、手を合わせる。 「「いただきます。」」 みんな男なので、食べ終わるのは一瞬だった。

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