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第551話

週明け、城崎と一緒に出勤すると、城崎はたちまちみんなに囲まれた。 「城崎くーん!!おかえりー!!」 「待ってたぞ、営業部のエース!」 「よくやった!お疲れ様。」 城崎はみんなに(ねぎら)いの言葉を受け、一人一人に丁寧に言葉を返す。 俺は城崎の隣から離れ、自分のデスクに着いた。 「めちゃくちゃ囲まれてんな。」 「あ。おはよう、涼真。」 「おはよ。で?あの状況見て、恋人としての感想は?」 「誇らしいよ、すごく。」 自分の恋人が褒められていると、なんだか嬉しい。 特にこの一ヶ月は、本当に身を削って頑張ってたもんなぁ。 「ちょっと望月さん!!来てください!!」 「へ?俺?」 「そうですよ!早く!!」 「???」 城崎を囲む人集りから、ちゅんちゅんが慌てた顔で出てきて一直線に俺の元へ来た。 そして手首を引かれて、人集りへ投げ込まれる。 「ちょっ…?!」 「先輩、いた。」 「わっ…!?」 バランスを崩し、倒れそうになっているところを、城崎が支えた。 ナイスキャッチ。 「大丈夫ですか?」 「お、おう…。」 「危ないですから、向こうで座ってて。」 城崎に言われ、デスクに戻る。 相変わらず城崎は優しいな…。 じゃなくて…!! 「ちゅんちゅん!何してくれてんだよ?!」 「だって、城崎さんがすげー眉間に皺寄って、愛想笑いできなくなってきてたんですもん!!」 「は?すげーニコニコだったけど?!」 「それは望月さん見つけたからでしょ。マージで顔怖かったんですってば!」 「だって今、城崎にデスク戻れって言われたんだぞ?」 「知らないですよ、そんなの!」 ちゅんちゅんのせいで転けそうになったのに、反省の色が見えない。 むしろ、何故か逆ギレされてるし。 「まぁまぁ。どうせ綾人が何も言わずに城崎から離れたんだろ。」 「なんでダメなんだよ。俺邪魔だろ、どう考えても。」 「急にいなくなったから不機嫌になったんじゃねぇの?今は綾人いなくても笑顔だし。ちゅんちゅんの言い分も俺には分かるよ。」 「涼真まで!」 親友まで敵に回っていじけていると、解放された城崎が俺たちの元へ来た。 「もしかして、俺の先輩いじめてますか?」 「「いじめてません。」」 「ならいいです。」 涼真とちゅんちゅんは棒読みでそう言って、何もなかったかのように仕事を始めた。 俺は城崎に見つめられながら、仕事をした。 すげぇやりにくかったことは言うまでもない。

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