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第553話

高速を使い、気づけばそこは中華街。 窓を開けると、中華料理のいい匂いが漂ってくる。 近くのパーキングに駐車し、車から降りた。 「人多いですね。平日だから、これでもマシなのかな…。先輩、離れないでくださいね。」 「…っ!」 城崎は俺の手を掴み、体を寄せる。 旅行の時はよかったけど、横浜なんてそんなに東京から離れてねーのに大丈夫かな…、って俺は心配になってるんだけど…。 城崎は気にしていないらしい。 「……ぃ、先輩?先輩ってば。」 「へっ…?!」 「大丈夫ですか?」 やべ、ボーッとしてた。 城崎が心配そうに俺の顔を覗き込んでいて、俺は慌てて距離を取って返事する。 「だ、大丈夫!大丈夫だから!」 「本当?日差しキツいし、これ被っててください。」 「わっ…!あ、ありがと…。」 「先輩のも持ってこればよかったです。」 城崎はクリスマスに買ったバケットハットを俺に被せた。 バケハまで被っちゃうと、ただでさえシミラールックで目立つのに、時計もネックレスもお揃いだから完全にカップルってバレるんだよ…。 でも、優しいよな…。 こういうことをスマートにできるところが、モテるんだろうなぁと思ったり。 「わー♡見て!あの人、格好良くない?」 「隣の人とシミラールックだぁ〜!可愛いね!」 通りすがりの女子高生くらいの二人組が、俺たちを指差してキャアキャア騒いでいた。 「先輩、聞いた?俺の先輩、可愛いって。」 「おまえが格好良いって話だろうが。」 そもそも随分年下の、しかも女の子に"可愛い"って言われても嬉しくはない。 複雑な気持ちだ…。 「そういえば先輩、何食べたいですか?」 「え…、あー、小籠包とか?」 「いいですね。俺も食べたい。あとは餃子と胡麻団子とか?」 「胡麻団子!!」 「ぷっ…、食いつくと思った。甘い物、好きですもんね。」 笑われてムッとしそうになったが、俺を見て愛おしそうに微笑む城崎を見たら、そんな気はさらさらなくなった。 なんでこんなに俺のこと好きなんだろう? どうせ聞いても、「全部」って言うんだろうな。 「美味いとこ知ってる?」 「人気なところ調べておきましたよ。行きましょう。」 「おう。」 小籠包、餃子、中華まんにテイクアウト用の北京ダック。 デザートに胡麻団子と台湾カステラ、ソフトクリームにタピオカミルクティー。 食べ歩きできるものは腹一杯詰め込んだ。 「先輩、食べ過ぎ。」 「もう入らない…。」 「当たり前でしょ。もう、子どもじゃないんですから…。」 車に戻って、ずっとそこで止まっていても駐車料金がかかるだけなので移動する。 少し移動した先のコンビニの駐車場で、お腹が落ち着くまで少し休んだ。

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