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第554話
お腹を休める意味も兼ねて、横浜近辺をドライブする。
車の中はエアコンもかかっていて温度もちょうどいいし、シートはクッションがいいのか心地良い。
それに、運転してる城崎を俺が独り占めできる。
「疲れない?」
「ん?全然。先輩もっと楽にしていいですよ?シート倒してもいいし、寝ててもいいし。」
「起きてるよ。」
「本当はお腹いっぱいで眠いでしょ。」
「そんなことねーもん。俺のこと、赤ちゃんかなんかと勘違いしてねぇ?」
ぷーっと頬を膨らませると、城崎はプハッと吹き出すように笑った。
笑ってる城崎、可愛い…。
じっと見つめていると、赤信号で止まった隙にキスされる。
「もぉ!見られたらどうすんだよ…?」
「ガラス越しだし、男同士って気づくか気づかないくらいで、顔まで見ないでしょ。」
「でも…」
「これでも我慢してるんだけど、ダメ?」
「………いい…、けど…。」
甘えるような目で見られて、簡単に許してしまう。
俺だって、嫌なわけではないから…。
許可を出すと城崎はもちろん調子に乗るわけで、大通りの長い信号が赤になった瞬間、舌を入れられた。
「ん…っ、んふ…」
「…先輩、逃げないで。」
「ゃっ…、だって見られちゃ……」
「これでいい?」
城崎は手を伸ばして、助手席側のカーテンを閉めた。
前にはトラック、歩道側、つまり助手席側の窓にはカーテン。
俺たちのキスは、故意に覗こうとしない限り見えなくなったわけで…。
「んっ…、んぁ♡あっ…」
「やっと力抜けた。見られてないか怖かったんですね、ごめんなさい。」
「ん、ん…♡」
髪を撫でられ、優しく声をかけられているのに、キスだけは息継ぎできなくなるくらい激しくて、そのギャップに興奮する。
夢中になっていると、プップッと後ろの車にクラクションを鳴らされ、はっと我に返る。
「城崎っ、あ、青だからっ…!」
「ちぇっ。残念。」
「集中しろってば…」
「また後でしてくれますか?」
「分かったから、前見ろって…」
「はい。言質とった〜♪」
城崎は嬉しそうにそう言って、やっと運転に集中してくれた。
本当…、俺のことばっかり…。
「とりあえず、またさっきの繁華街に戻りますね。海沿い散歩してもいいですし、大抵なんでもあるでしょ。」
「うん…」
「もう舌入れないから、そんなにそっぽ向くのやめてください。」
「………恥ずかしいだけ。」
さっきの今で真っ直ぐ顔を見れるはずもなく、俺は行きしなと同じように照れて俯いていた。
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