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第558話
約束通り観覧車のてっぺんではベロチューをした。
それはもう濃厚な。
「まだ顔見せてくれないんですか?」
「見せない…っ!」
何が恥ずかしかったって、城崎に跨ってたからベロチューに反応してしまったソレがバレて、ベロチューついでに色々されたのだ。
もちろん空中だから手洗い場もあるわけなく、城崎の手のひらいっぱいに吐き出したそれを、城崎は平気な顔で舐めたわけで…。
おかげでゴンドラが地上に着くまで、城崎の顔なんか見れなかったし、顔を上げようものなら目を合わせてこようとするから、ずーっと下向いてて外の景色も見れなかった。
「いつももっとすごいことしてるのに?」
「うるさいっ!バカ!」
ああ、もう!
思い出しただけで恥ずかしい…。
手洗いを済ませて、城崎から逃げるようにトイレから逃げ出すと、人とぶつかった。
「すみませんっ!」
「いえ。立てますか?」
「あ、はい…。」
手を差し伸べてくれた男性の手を取ろうとすると、後ろからグイッと腋を支えて持ち上げられた。
言わずもがな城崎だ。
「先輩、大丈夫?」
「うん。ありがと…。」
「やっと顔見れた。」
「っ!」
俺の顔を見て嬉しそうに笑う城崎。
不覚にもドキッとしてしまう。
「あの、落としましたよ。」
「あっ!ありがとうございます。本当すみません…。」
第三者に声をかけられてハッとする。
どうやらぶつかった拍子にハンカチを落としたらしく、男性はそれを拾って俺に渡した。
ぺこぺこ頭を下げて、お礼を言ってその場を後にする。
「もう。先輩ってば、危なっかしいなぁ。」
「元はと言えば、城崎が観覧車なんかであんなことするからだろ…!そうじゃなかったら逃げてないし!」
「そうじゃなくて、俺以外の手握ろうとしたでしょ。ダメですよ。先輩の手なんか握ったら惚れちゃうじゃないですか。」
「そんなわけあるか、バカ。」
ぶつかったことじゃなく、自分以外の手を取ろうとしたことが気に入らなかったらしい。
危ないの意味が違う。
というか、手握っただけで惚れられるほど、俺に魅力があるとは思えない。
本当に城崎は盲目すぎる。
そのあとショッピングモールを見て回り、服を買ったり、家具や食器を買って、一旦車に荷物を置くために駐車場に戻った。
時刻は18時前。
だいぶ陽も落ちてきて、辺りは暗くなってきていた。
「ちょっと早いですけど、夕食食べますか?」
「予約は何時なんだよ?」
「18時半ですけど、今から行けるか確認してみます。」
城崎はスマホで電話をかけ、俺にオッケーサインを出した。
「今から準備できますって。行きましょう。」
「どこ?」
「そこのホテルの68階。」
「はぁっ?!」
「ほら、行きましょ。」
また俺に言わずにクソ高いホテルディナー予約して…!
そりゃ俺のために予約してくれたんだって分かってるから嬉しいんだけど、お金の使い方、もう一度教えないといけないな…。
俺は複雑な気持ちで、城崎にエスコートされた。
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