559 / 1069
第559話
「いらっしゃいませ。」
「先ほど電話させていただきました、城崎です。」
「ようこそ、お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
スタッフに案内された席は、窓際の夜景のよく見える一等席だった。
広東料理の有名なシェフがいる高級レストラン。
料理は今からコースで運ばれてくるらしい。
「昼も夜も中華でごめんね、先輩。」
「いや、いいんだけどさ…」
「お腹空いてますか?」
「今から空かす。」
あれだけ食べたから、正直なこと言うとそんなにお腹は空いてない。
こんな高級レストラン来るなら、昼もう少し抑えておけばよかった…。
「早く言えよ…。」
「サプライズにしたくて。」
「いや、たしかにサプライズだけど…。」
陽が完全に落ちて、辺りの建物がライトアップされている。
本当に綺麗。
さっき乗った観覧車も、海に掛かる大きな橋も、船も、遊園地も、いろいろなものがキラキラ光り、横浜の夜を照らしている。
「綺麗…。」
「あとでドライブでも綺麗な夜景見せてあげます。」
「これには劣っちゃうだろ…。」
「また違った景色ですから。期待してて下さいね。」
今日は朝から夜まで激甘城崎だ。
いつも甘いけど、なんか今日は彼氏力というか…。
いつにもましてゲロ甘だ。
そしてそんな城崎にキュン…としてしまってる俺。
「美味しいですね。」
「ん…、美味い…。」
「デザート、俺のも食べますか?」
「いいの?」
「俺はあとでとびっきり甘いデザートが控えてますから♡」
あとで…?
とびっきり甘いデザート……?
………!!!
「………!ば、馬鹿!!」
「辛辣〜。今日先輩、すげぇ俺のことバカって言ってる。」
「バカなこと言うからだろ!?」
城崎の言うデザートは、きっと俺のことだろう。
恥ずかし気もなくそう言った城崎は、やっぱり甘過ぎる。
いかにも女性が喜びそうな王子様を演じたって、俺は…、俺は……。
「せーんぱい♡」
「な、何…?」
「………あとでいっぱいエッチなことしようね?♡」
周りに聞こえないように、耳元で囁いた城崎の声。
ダイレクトに股間に響き、俺は身動き取れずに顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏した。
誰だ、こいつのこと王子様って言ったやつ。
今すぐ変態エロ王子に訂正しろ!!
ともだちにシェアしよう!