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第561話

着いたのは少しだけレトロっぽいけど、小綺麗なラブホテル。 城崎とこういうホテルに来るのは久々な気がする。 「先輩、どの部屋がいい?」 「どこでもいいから…っ、早く…」 「先輩が決めて?ここ、いろんな部屋あるみたい。」 本当にどこでもいいのに。 そう思ってたけど、チラッと見たら今まで使ったラブホテルの中でも、特殊な部屋の種類が圧倒的に多かった。 そう、所謂SMルームというやつが。 「ふ、普通のでいい…!」 「本当?いいんだよ、好きなの選んで。」 「……っ」 爆発しそうな性欲と、少しの興味。 俺は(はりつけ)台の写真の載った、赤い照明の部屋のボタンを押した。 城崎は料金を支払い、俺の手を引いた。 選んだ部屋に着きドアを開けると、すげー広くて、あと見たこともない椅子や、初めて目にする磔台なんかがあった。 「先輩、本当にSMルームにしたんだ?」 「っ!!」 「俺に意地悪されたかった?」 ニヤッと笑う城崎はもう既に意地悪だ。 今日ずっと王子様みたいだったくせに。 エッチなことになると、あの爽やかさはどこへ消えてしまうんだ。 「色々あるけど、どれ使いたいですか?どうせなら、先輩の興味あるやつ使ってあげたい。」 「わ…かんない……」 「初めて?」 「うん…」 「まぁ初めてじゃなかったら、許さないけどね。」 「つ、使ったことあるかもだろ?!」 「だって先輩Mだし、彼女にこういうことするタイプじゃないでしょ。」 城崎は小道具みたいなのがいっぱい入った箱を物色しながらそう言った。 城崎はこういうプレイしたことあんのかな…。 なんか慣れてそうな言い草だし…。 「城崎は…、その……」 「?」 「…経験……あんの…?」 「あぁ。小道具くらいなら多少使ったことありますけど、こういう台とか椅子とかは使ったことないですよ。知識としてはありますけど。」 城崎は壁に設置された枷を確認しながら、俺にそう返事した。 ざわざわしていた心が少し落ち着く。 今更どう頑張っても消すことのできない城崎の過去が、どうしても気になってしまう自分が嫌だ。 「先輩、おいで。」 城崎に呼ばれて近づくと、カシャン…と嫌な音がした。 「捕まえた♡」 「…!!」 抱きしめてもらえるのかと思ったのに…! 壁に埋め込まれたX字の磔台に両手首を拘束された。

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