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第568話

次の日、俺は時間通り出社した。 ちょっと眠いけど…。 でも、城崎は……。 「城崎くんってば、また半休?」 「最近増えたな。彼女できたって言ってたし、それが原因か?」 「あー、そういえばバレンタインもたくさん断ってたもんね。」 「それは去年からだろ(笑)」 一年目ほとんど有休を使わなかった城崎が、二年目になってから有休をサクサク消化し始めた。 ちゃんと仕事をしてるから、文句を言う人はいないけど、不思議に思っている人は何人かいるようだ。 「やめてくださいー!聞きたくないですぅ!」 「ひと目見るだけでよかったのにぃ〜!」 今年度で退職予定の女性社員、つまり今日で最後の勤務の人が朝から何人か城崎に会いに来ていた。 手には小さな紙袋まで持ってる。 城崎に渡しにきたのだろうか? あなたが送別される側じゃないの?と思いながら、見なかったことにして仕事を続ける。 「城崎どうしたんだよ?昨日デートだったんだろ?」 「あぁ…。えー、うん…。」 「顔赤いけど。」 涼真に指摘されて、思わず肩を揺らす。 やめてくれ、涼真…。 思い出すだけで死ぬほど恥ずかしいんだよ、こっちは。 「色々あって帰ってきたの3時とか…。で、そこから城崎はレンタカー返しに行ったりしてたから、多分寝たの4時過ぎてる…。」 「はぁ?!」 「俺のせいでもあるけど、城崎のせいでもあるから…。」 「なんで社会人二人揃って、そんな無茶なスケジュール組むかなぁ…。」 涼真はため息をつき、キーボードを打つ手を再開させる。 だってさぁ…。 城崎は一緒に出社するって言ったけど、目の下のクマが酷かったんだ。 寝かしてあげたいと思っちゃうじゃん…。 「城崎のいない分、午前中は俺が頑張るから…。」 「まぁ年度末だし、城崎も大型契約終わったとこだしな。百歩譲って許されるんじゃね?」 「今回は目を瞑ってほしい…。」 「これからは気をつけろよ?綾人だって、明日から主任なんだからな?」 主任…かぁ……。 俺に務まるか不安になってきた。 「望月くーん、ちょっと手伝ってくれない?」 「あ、はい。今行きます。」 「望月〜、そのあとこっちな。」 「はい!すぐに!」 主任業務が移行するにあたって、ここ最近は他のメンバーとの擦り合わせもしている。 今までこんな色々していたのかと思うと、定時で帰っていた今の主任って本当に仕事早かったんだなぁと思う。 「今日は定時で終わって、主任の送別会みんなで始めるぞー!」 「「おー!!」」 飲み会の日の営業部の団結力は相変わらず凄くて、しかも午後に城崎が出社してからフリーで動いてくれたので、みんなしっかり定時にタイムカードを切ることができた。

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