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第572話

今日から4月。 とうとう新年度が始まった。 「城崎〜、そろそろ出るぞ。」 「はーい。」 革靴を履いて、玄関で城崎を待つ。 城崎はいつもと違うスーツを着て、バレンタインにプレゼントしたネクタイをつけていた。 「今日どうした?いつもと違う…。」 「牽制ですよ。今日は先輩の隣から離れるつもりないですから。」 「いや、それはダメだろ。」 「新人に先輩の隣は俺だって、嫌でも認識させてやります。」 「だから新人じゃないんだって。ベテランだよ。」 今日の城崎はいつもより数倍格好良い。 元が良すぎて、どんなに着飾っても数倍にしかならない。 けど明らかに普段より格好良い。 「先輩、いってきますのチュー♡」 「んっ…」 背伸びして唇を重ねる。 ゆっくりと離して、城崎の目を見つめると、城崎は嬉しそうに笑った。 「いつもより3秒は長かった!」 「そう?」 「今日の俺が格好良いからですか?」 「ぷっ…、かもな?」 「あー…、好き。先輩、俺もっと格好良くなるから、1日1秒ずつキスの時間増やして?」 「最大値決めねぇと、家出れなくなるじゃん。」 馬鹿なこと言う城崎を置いて、先に家から出た。 城崎も慌てて家を出て、鍵を閉めて俺の後をついてくる。 やっぱり同棲してよかった。 毎朝幸せだ。 「どんな奴が来ますかね。」 「逆にどういう人に来てほしいんだ?」 「先輩に手を出さない、女好きな人。」 「チャラい系ってこと?」 「あーダメ。チャラい奴はワンチャン男もアリとか言い出しそうだからダメです。むっつりスケベ系。巨乳好きな根暗系。でも仕事はできる人。」 「それ悪口だろ。」 城崎の理想を聞きながら、面白くて吹き出してしまう。 巨乳好きな根暗系って…(笑) ゲラゲラ笑っていると、城崎は「本気で言ってるんですからね!?」と怒っていた。 「なーに楽しそうに話してんの?」 「あ、おはよう。」 「朝から仲良いなぁ?城崎は怒ってるみたいだけど?」 「なんか新しく異動してくる人、どんな人がいいかって話してたんだけどさ、こいつが…」 会社前で涼真と合流し、さっきまで話してた内容を伝える。 「ぶははっ!巨乳好きな根暗系って!それは悪口!」 「だろ?そしたら本気だからなんだって、機嫌悪いの。」 「面白すぎだろ、城崎(笑)大丈夫だって。そんないっぱい同性愛者なんかいねーんだから。」 「だといいですけど…。」 営業部に着いてからも、俺と涼真は会話を思い出してはずっと笑っていた。 そして就業時刻、部長と一緒に見慣れない人が入ってきた。

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