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第574話
デスクに戻った瞬間、城崎が俺の元へ駆けつける。
すげー不機嫌な顔で…。
「会議室行こう。」
今にも叫び出しそうな城崎を、口が開く前に会議室に押し込んだ。
扉を閉めると、案の定興奮した様子で俺に問い詰める。
「なんなんですか!あいつ!!」
「なんなんですかって…。」
「ゲイって!!恋愛対象男ってことですよ!?先輩もバチバチに恋愛対象ってことじゃないですか!!」
「バチバチって…。」
「何もされてないですか?!大丈夫?!」
「見てたろ?何もないって…。」
興奮して語彙力が下がる城崎を宥める。
「なんか…、見たことあるんです…。」
「え?」
「蛇目風雅。どっかで会ったことある気がする…。」
「気のせいだろ。ずっと横浜支部にいたっぽいし。」
「でもあの胡散臭い笑顔…。嫌いです…。」
これはメンタルフォロー必要なやつかもしれない…。
多分このままじゃ、午後も仕事に集中できないだろうし。
「城崎、外にランチ行く?」
「行く…。」
「出る準備するから、ちょっと待ってな。」
会議室から出て、財布とスマホを取る。
ポケットに入れて城崎の元へ戻ろうとすると、久米さんに呼び止められた。
「久米さん、なんですか?」
「望月くん、一緒に話さない?」
「あー…。俺、今から城崎とランチ行くんです。」
「えー?城崎くんはいつでもランチ行けるじゃん!てか、城崎くんも連れておいでよ!面白いんだよ、蛇目くん!」
久米さんともう一人女性社員、その隣に蛇目。
ゲイって言ってなかったっけ。
というか、蛇目に引き止められるならともかく、久米さんは先輩だし断りづらい。
「城崎に声かけてくるんで、待っててもらっていいですか?」
「りょうかーい。」
久米さんに一言断りを入れ、城崎の元へ向かう。
城崎は焦った様子で、早く外に出たそうにソワソワしていた。
「城崎、悪い。ランチ今度にしよう?」
「え…?なんで?どうしてですか?」
「久米さんに引き止められちゃってさ…。城崎も来ない?蛇目もいるんだけど…。」
「…………いい。一人で食べてきます。」
「城崎…」
「先輩も上の人相手だと断りづらいんですよね。わかってます。じゃあ、また後で。」
城崎は目を合わせないまま、廊下へと姿を消した。
悪いことした…。
城崎も事情はわかってくれたみたいだけど、ショック受けてるよな…。
失礼なことしてでも、城崎と一緒にいるべきだったのかな…。
城崎が去ってしまってから後悔する。
今更城崎を追いかけたって、一度城崎を選ばなかったことは事実だし、後でちゃんと謝ろう。
戻ってこないか気にしつつ、俺はコンビニで昼飯を買ってから久米さんの元へ戻った。
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