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第583話

次の日、いつも通り城崎と一緒に出勤。 結局乳首には絆創膏を貼ってきた。 ちゃんとインナーシャツも着た。 「おはようございます。主任、城崎くん。」 「あぁ、おはよう。」 「………。」 ちょうど会社の入り口で蛇目と出会う。 相変わらずニコニコと笑っていて表情は読めない。 城崎はめちゃくちゃ愛想悪いし…。 「城崎、挨拶。」 「………おはようございます。」 「ふふっ。休日はお二人でごゆっくりできましたか?」 「蛇目、職場でその話は…」 「あぁ、すみません。つい。」 社内でこんな話、誰に聞かれるか分からない。 止めると、蛇目はすぐに気づいて話題を変えた。 城崎は嫌そうだが、向かう場所は同じなので、同じエレベーターに乗って上のフロアへ移動する。 部署に着いたら、とりあえず自分のデスクに向かい、まもなく就業時刻になり仕事が始まった。 「私、完全に城崎くんに嫌われちゃってますね…。」 物品管理室に移動中、蛇目は俺の後ろにつきながら、苦笑してそう言った。 そりゃな…。 ただでさえ俺の近くにいると警戒されるのに、ゲイで、俺のことがタイプとか言ってて、初日から城崎を煽るなんて、逆に嫌われないわけがない。 「すみません。てっきりプレイの一環かと思いまして…。」 「へ?」 「チクバンです。SMとか、乳首開発とか、そういうのかなって。余計なお世話でしたね。不快な思いさせたのであれば、本当にすみません。」 「いやいや…、こっちこそ悪かったな。」 なんだ…。悪気があって煽ったわけではなかったのか。 蛇目なりの世間話というか、ゲイ同士のノリ的な何かだったのかな…。 蛇目の真摯な態度を見て、俺も謝った。 「同じ性的マイノリティなので、きっと共通の悩みや、同じマイノリティだからこそ共感できることもあると思うんです。だから、主任たちとはこれからもいい関係を築いていきたいんです。」 「そう…だよな…。なんか頼もしいな、蛇目。」 「本当ですか?」 「俺さ、ゲイっていうか、城崎のことが好きなだけなんだよね。城崎と付き合うまでは、普通に女の子が好きだったし。」 城崎とダメになったとしても、女の子選ぶだろうしな。 まぁ、城崎と別れたら、多分今後俺は恋愛なんかしないと思うけど…。 「そうなんですね。城崎くんは魅力的な方ですものね。」 「そうなんだよ!わかる?!」 「はい。とても。」 「あ、でも城崎は渡さないからな?!俺、離す気ねーから!」 「ふふっ、大丈夫ですよ。私のタイプとは違うので。それより主任、職場でこの手の話、してもいいんですか?」 「あっ……」 やば。 ついつい盛り上がって、声のトーンも大きくなってしまった。 周りをキョロキョロしたが、誰もいなくてホッと息を吐いた。 「周りのこと忘れてしまうくらい、大好きなんですね。」 「ま、まぁ…、うん…。」 「あー!!先輩、いたっ!!二人にならないでって言ったのに!!」 「あ、城崎。」 城崎が俺と蛇目の姿を視界に入れるなり、すっ飛んできた。 グルル…っと威嚇するように蛇目を睨み、俺の腕を引いて蛇の目から引き離す。 「まるで番犬ですね。」 「悪いな。こういうとこも好きなんだよ。」 「先輩っ!?」 城崎の頭を撫でると、城崎はびっくりして俺を見つめていた。

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