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第584話
昼休みになり、城崎とランチを食べに外に出る。
城崎は笑顔になったり、かと思えばムッとしたり、表情がコロコロ変わって忙しそうだ。
日替わりランチを頼んで待っている間、じっと顔を見つめてみる。
「どしたの。」
「どうしたって…。先輩が俺のこと好きって言ってくれたから嬉しいけど…。いきなり約束破って二人になってたから怒ってるんです…!」
「あぁ、悪い。ただの案内だし、部屋に入る予定ではなかったから、いいかなって思って。」
「案内は俺がしますから!」
「城崎だって仕事あるだろうが。指導係任されてるのは俺だから、それはダメ。二人きりで部屋に入る時とかはちゃんとお願いするから。」
さすがに本社の案内までメンバーである城崎に任せたら、指導係の俺が部長に怒られる。
しかも城崎はうちのトップセールスマン。
上はきっと、城崎には営業の方に力を注いでほしいと思っているはずだ。
「先輩の午後の予定は?」
「午後は営業部にいるよ。」
「本当っ?」
「うん。何か手伝おうか?」
「いや、自分の分は自分で終わらせます。先輩が近くにいたら一瞬で終わるんで。」
「なら安心だな。」
城崎ができるって断言するときは大抵できる。
仕事の実力は折り紙付きだからな。
俺は城崎と一緒に帰れるように、自分の業務を終わらせないとだなぁ…。
「桜、楽しみですね。」
「うん。年に一度の楽しみだもんな。」
「もともとお花見とかそういうの、興味なかったんですけど、先輩とお付き合いしてから毎日が楽しみになりました。」
「そりゃよかった。歳も歳だからイベントごと全部楽しめとは言わないけど、桜とかそういう日本ならではのことは楽しんでほしいな。」
なんか言ってることじじ臭いかな?
6歳差って近いようで離れていて、ジェネレーションギャップとまではいかないんだけど、時々歳の差感じることがあるんだよな…。
城崎若いなぁって思うこと、結構ある。
「悪い。押しつけっぽくなったか?」
「ううん。俺すごく楽しんでますよ。行事にあやかって先輩に非日常的なことするのとか。」
「っ!」
「先輩もなんだかんだ付き合ってくれるし?」
「そ、それは…!」
「いつも結構興奮してるでしょ?先輩ってば、可愛いなぁ。」
クリスマスをはじめ、ハロウィンやバレンタイン。
コスプレとか、いつもと違うセックスとか、非日常的なことに興奮していたのは事実。
でもそれを自覚するのと、他人に指摘されるのとではまた違う。
否定したくなる俺の気持ちもわかってほしい。
「今日のお花見は何しますか?」
「ふ、普通のお花見でいいっ!」
「へぇ〜?本当に?満足できる?」
「できるから!」
城崎はニヤニヤしながら俺の手を触る。
揶揄われて真っ赤になっていると、店員が日替わりランチを持ってきて、隠すようにさっと手を離した。
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