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第586話
部署に戻ってすぐ、俺は机に顔を伏せる。
部署に入る直前、城崎に指摘された。
ヤッた後と同じ顔してるから、入っちゃダメって…。
でも俺は主任だし、就業時刻に遅れるなんてそんなことしたくないし、だから城崎のストップを無視して机に直行して顔を伏せているわけだ。
「綾人、お前バカなの?」
「…っ!」
涼真が呆れた声で俺に尋ねる。
そっと顔を上げると、想像した通りの呆れ顔だ。
「城崎と外にランチ行った時、大抵こんな感じじゃね?学べよ、そろそろ。」
「悪い……」
「社外だからってハメ外しすぎんなよ?社外つっても、すぐそこに会社あるんだから。」
「うん…。」
「うわ…、番犬きたわ。俺デスク戻る。」
涼真は面倒臭そうな顔をして、逃げるように俺の元から去っていった。
入れ替わりで城崎が近づいてきて、すれ違いに涼真にガンを飛ばしている。
「先輩、何話してたんですか?」
「……会社の近くでは控えろよって。」
「あぁ、なんだ。まぁ先輩は顔に出やすいですからね。」
「で、出やすいかな…?」
「現にさっき、めちゃくちゃえっちな顔してたじゃないですか。今シてきましたよ〜みたいな顔でそのまま部署に帰ろうとするから、そりゃ止めますよ。」
「そんな顔してたの、俺?」
「してましたね。あんな顔俺以外に見せるなんて、絶対にダメですから。」
城崎はムッとしてそう言った。
そりゃそうだよな。
俺だって、城崎の切羽詰まった顔とかみんなに見せたくないもん。
「落ち着くまで休憩室で隠れてくる。」
「鍵閉めてくださいね。」
「なんで?」
「蛇目さんとか入ってきたら、また何か言われたりするでしょ。あの人が今の先輩の顔見たら、手を出しかねないです。」
何故か容易に想像できてしまった。
俺か城崎に何かしらしてきそうな…。
「わかった。数分で戻る。」
「待ってます。あ、そうだ。この資料の確認お願いしてもいいですか?」
「ん。中で確認しとく。」
城崎からファイルを預かり、休憩室に入って鍵を閉めた。
珈琲を作り、その間にパラパラと資料をめくる。
相変わらず分かりやすい資料だな…。
これを短時間で作るんだもんな…。
夢中になって資料に目を通していると、そのうち気持ちも仕事モードに切り替わっていた。
珈琲を持って休憩室を出て、そこからは休憩なしで定時まで働き続けた。
城崎も余裕で今日の分の仕事は終わっていたので、みんなに挨拶して会社を後にした。
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