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第587話

仕事終わりにそのまま城崎と花見スポットへ向かう。 辺りは暗くなり始め、既にライトアップされていた。 「うわ〜!綺麗〜!!」 満開の桜。 大勢の人、並ぶ出店。 テンション上がるなぁ〜。 「お腹も空いてきたし、なんか食べるか?」 「はい。先輩もフランクフルト以外ならいいですよ。」 「え、なんでダメなの?」 「分かるでしょ?」 フランクフルトがダメな理由……。 ………………。 「バカなの?!」 「はい?」 「俺がフランクフルト食ってんの見て興奮する奴なんて、城崎しかいないだろ!」 「俺が興奮するってことは、他の人も興奮する可能性があるでしょ?あ。アメリカンドッグもダメです。」 「……分かったよ。焼きそばにする。」 話し合っても堂々巡りになりそうな気がして、さっさと諦める。 俺が焼きそばを買っている間に、城崎はビールを買って俺を待っていた。 「ビール!!」 「先輩楽しみにしてたから、特別です。」 「ありがとう!やったー!」 両手が塞がった城崎に抱きつくと、城崎は顔を真っ赤にした。 ビールを受け取って、グイッと飲む。 「ん〜〜!!仕事終わりのビール最高!」 「先輩、ペース早い。」 「いいじゃんか、たまには〜。」 あっという間に一杯飲み終え、もう一杯買いに行こうとすると止められた。 唇を尖らせて少し甘えてみるが、それでもお許しは出なかった。 「ケチ。」 「もう少し歩いて酔い覚ましてからね。今飲んだら、先輩歩けなくなりそうだし。」 「おんぶしてくれたらいいじゃん。」 「こんなに大勢人がいるのに、いいんですか?俺はいいですけど。」 「……………」 たしかに知り合いがいなかったとしても、この人混みでおんぶされるのは恥ずかしい…かも……。 それ以上何も言えなくて黙ると、城崎はくすくす笑った。 「酔いが覚めたらもう一杯飲んでもいいですよ。」 「本当?!」 「ていうか、先輩ちゃんと桜見てますか?」 「見てるよ!!城崎こそ見てないじゃん!」 「俺は花より先輩だからいいんです。」 数キロ続く桜の道を、手を繋いで歩く。 時々風が吹いて、散った桜の花びらが城崎の頭に乗ったりして、それを記念に写真に撮った。 15分ほど歩くと酔いも覚めてきて、また出店でビールを買って飲む。 気分もふわふわしてきて、楽しくて仕方なかった。

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