598 / 1069

第598話

休みが終わり、月曜日。 土日はたっぷり城崎とイチャついた。 浮かれた気持ちのまま仕事をしていると、蛇目が話しかけてきた。 「金曜日、主任も来てくださるんですか?」 「あぁ。一応主任だし、もちろん行くよ。」 今週金曜は、新人と蛇目の歓迎会だ。 去年と違って、今回は部長がちゃんと覚えていたらしい。 「嬉しいです。私、あまり飲み会得意じゃなくて…。主任がいてくれるなら、少し安心します。」 蛇目はテキパキと手を動かしながら、俺に話しかける。 こいつ、本当に仕事のスピード早ぇーな。 「うちの営業部、飲み会好きだぞ。」 「いいですね。」 「ついさっき得意じゃないつってなかった?」 「女性に迫られるから苦手なだけで、ここの営業部の皆さんはアットホームというか、変に色目出してくる方いないじゃないですか。」 「まぁそうだな。」 嫌味か? 大抵の男、それ聞いたら嫌味と捉えると思うけどな。 本人に悪意はなさそうだけど。 ゲイ公言してるし。 「それに、今日は噂の新人くんも来ますしね。」 「噂?」 「主任、聞いてませんか?変わった名前の堅物新人くんって噂ですよ。」 「へぇ〜。」 そういえば今日から新人上がってくるんだっけ。 もうちゅんちゅんがここに来て一年が経つと思うと、時間って早いな。 「あ、ほらほら。来ましたよ。」 「お?」 部長とともに営業部に入ってきたのは、ちょうどちゅんちゅんと同じくらいのサイズ感の、シャツのボタンを上まできっちりと閉めた真面目そうな男の子。 「おーい、みんな。新人紹介するぞ〜。」 「今日からお世話になりますっ!蛙石(かわずいし) 皇太(おうた)です。趣味は詰将棋と掃除、特技は歌を歌うことです。会社に貢献できる人材へ成長できるよう励んでまいります。よろしくお願い致します。」 蛙石…。 珍しい名前だな。 噂通り、すごく真面目そうなのに、特技は歌なんだ。 新人はみんなに囲まれながら、一つずつ丁寧に返事している。 「新人は普通そうなのでよかった。」 「城崎、おまえなぁ…」 「先輩に手を出さない人ならどうでもいいんです♡」 みんなが新人の周りに集まってる中、城崎は俺の隣をマークする。 肩に手を回されてドキッとした。 「城崎…」 「あのっ!!」 「わぁっ?!」 城崎と目があった瞬間、後ろから大きな声がしてビクッと身体が震えた。

ともだちにシェアしよう!