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第598話
休みが終わり、月曜日。
土日はたっぷり城崎とイチャついた。
浮かれた気持ちのまま仕事をしていると、蛇目が話しかけてきた。
「金曜日、主任も来てくださるんですか?」
「あぁ。一応主任だし、もちろん行くよ。」
今週金曜は、新人と蛇目の歓迎会だ。
去年と違って、今回は部長がちゃんと覚えていたらしい。
「嬉しいです。私、あまり飲み会得意じゃなくて…。主任がいてくれるなら、少し安心します。」
蛇目はテキパキと手を動かしながら、俺に話しかける。
こいつ、本当に仕事のスピード早ぇーな。
「うちの営業部、飲み会好きだぞ。」
「いいですね。」
「ついさっき得意じゃないつってなかった?」
「女性に迫られるから苦手なだけで、ここの営業部の皆さんはアットホームというか、変に色目出してくる方いないじゃないですか。」
「まぁそうだな。」
嫌味か?
大抵の男、それ聞いたら嫌味と捉えると思うけどな。
本人に悪意はなさそうだけど。
ゲイ公言してるし。
「それに、今日は噂の新人くんも来ますしね。」
「噂?」
「主任、聞いてませんか?変わった名前の堅物新人くんって噂ですよ。」
「へぇ〜。」
そういえば今日から新人上がってくるんだっけ。
もうちゅんちゅんがここに来て一年が経つと思うと、時間って早いな。
「あ、ほらほら。来ましたよ。」
「お?」
部長とともに営業部に入ってきたのは、ちょうどちゅんちゅんと同じくらいのサイズ感の、シャツのボタンを上まできっちりと閉めた真面目そうな男の子。
「おーい、みんな。新人紹介するぞ〜。」
「今日からお世話になりますっ!蛙石 皇太 です。趣味は詰将棋と掃除、特技は歌を歌うことです。会社に貢献できる人材へ成長できるよう励んでまいります。よろしくお願い致します。」
蛙石…。
珍しい名前だな。
噂通り、すごく真面目そうなのに、特技は歌なんだ。
新人はみんなに囲まれながら、一つずつ丁寧に返事している。
「新人は普通そうなのでよかった。」
「城崎、おまえなぁ…」
「先輩に手を出さない人ならどうでもいいんです♡」
みんなが新人の周りに集まってる中、城崎は俺の隣をマークする。
肩に手を回されてドキッとした。
「城崎…」
「あのっ!!」
「わぁっ?!」
城崎と目があった瞬間、後ろから大きな声がしてビクッと身体が震えた。
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