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第600話

「疲れた……。」 「お疲れ様。」 定時になった瞬間、城崎は飛び出すように会社を出ていった。 駅で俺のこと待ってくれていて、一緒に帰って、今日は珍しく俺が夜ご飯を作った。 今は一緒に入浴中。 「あいつなんなんですか…。しつこ過ぎて引くんですけど…。」 「そうだな。なかなかの熱量だった。」 「もしかして、先輩から見た最初の俺って、あんな感じだったんですか…?」 「いや、まぁ…あそこまでではないけど…。」 城崎がアタックしてきたのは、俺に告白してからだし、あそこまでしつこくはなかったと思う。 城崎はため息つきながら俺にもたれかかった。 「先輩と同棲しててよかった…。癒しがなきゃストレスで死ぬ…。」 「まぁ尊敬されてるってことだし、そう言うなよ。」 「先輩、キスして?」 「ん、いいよ。」 振り返って城崎の首に手を回す。 唇を重ねて舌を吸うと、城崎は満足そうに微笑んで、舌を絡める。 「んっ…ふ…♡」 「可愛い…。あー…、明日仕事行くの憂鬱だな…。」 「可愛がってやりなよ。」 「嫌ですよ。俺が可愛がるのは先輩だけ。つーか、あの新人真面目っぽいくせに、あのしつこさはなんなんですか?」 「まぁたしかにしつこかったね…。」 「人との距離感わかってない。絶対友達いなかったでしょ。」 城崎はぷんすか怒りながら愚痴を吐いた。 キツいこと言うなぁ…。 多分城崎の言う通りだと思うけど…。 「それ本人には言っちゃダメだぞ。」 「なんでですか。営業テクニック以前に、人との距離感は教えるべきです。」 「いや、それはいいんだけど、友達いなかったとか言っちゃダメだぞって。」 「先輩は優しいなぁ…。そこも好きなんですけど。」 髪をすくってチュッとキスを落とされる。 城崎の顔は月曜日の夜とは思えないくらいどんよりしてて、相当疲れたんだと思う。 「マッサージしてやろうか?」 「エロいやつですか?!」 「違ぇよ。」 エロい妄想をできるくらいには元気でよかった。 頭を小突くと、ヘヘッと嬉しそうに笑う。 「ごめんなさい。普通のマッサージでいいからしてほしい。」 「ん、いいよ。風呂上がってからな。」 「じゃあ上がりましょう!」 「そんなに上手くないぞ?」 「いいんです。先輩にしてもらうってことが重要なんですから。」 風呂から上がり、服を着てリビングに移動する。 城崎は腰にタオルだけ巻いて、半裸のままリビングについてきた。

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