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第606話
黙ってしまった城崎を抱きしめて、逞しい背中に顔を埋める。
「約束したじゃん…。」
「………。」
「仕事して、歓迎会も参加して、家帰ってエッチするんだろ…。こんな雰囲気悪いままする気なのか?」
気まずいセックスならやらない方がマシだけど。
そもそも雰囲気悪いままにしたくない。
絶対ここで仲直りする。
「………いいんですか?」
「ん?」
「先輩怒ってるから、もう約束はなしかと思いました…。こんな俺でもいいの?」
「歓迎会参加して、蛇目にちゃんとお礼言える?」
「……………はい。」
「じゃあ許す。」
嫌そうだったけど渋々返事した城崎をいい子いい子して、二人で居酒屋に向かう。
宴会場は既にワイワイと賑わっていた。
「あー!また二人遅刻!遅〜い!」
「本当仲良しだな〜。」
上司に揶揄われながら部屋に入り、席に着こうとすると、俺と城崎はそれぞれ別方向へ腕を引かれた。
「城崎さんっ!俺の隣きてください!!」
「主任、こちらへどうぞ。」
俺は蛇目に、城崎は蛙石くんに腕を引かれたが、城崎は反対側の手で俺を掴んだ。
結局、蛙石くん、城崎、俺、蛇目という珍妙な順に並んで座った。
主役二人に囲まれて座っている俺たちは居心地が悪い。
「みんな揃ったところで、飲み物はそろったか〜?」
「「「はーい」」」
「じゃあいくぞ〜!乾杯!」
「「「カンパーイ♪」」」
部長が音頭を取り、グラスを合わせて各々飲み始めた。
「改めて、今日の主役二人から挨拶してもらおうかな。」
「はい。では私から。改めまして、蛇目風雅です。この二週間でも分かるほど、ここの営業部は雰囲気が良くて働きやすいです。これからも皆さんと一緒に楽しく働ければと思います。尽力致します。よろしくお願いします。」
蛇目の丁寧な挨拶に、一同拍手。
5月には蛇目も営業に出るし、城崎のトップの座も危ういかもしれないな。
次に蛙石くんが起立する。
「蛙石皇太です。城崎さんを見習って、2年目には大手企業と契約結びます。よろしくお願いします。」
蛙石くんの挨拶に、上司はみんな息子を見るような優しい目で拍手していた。
城崎はげんなりしていたけど。
挨拶が終わった後は、みんなそれぞれで話し始める。
「城崎さん、城崎さん!お酒どうぞ!」
「いらない。先輩、注 いで?」
「なんでだよ。蛙石くんに注いでもらえばいいじゃん。」
「こいつに注がせたら、なんか交換条件出してきそうで嫌です。」
たしかに。あり得ない話じゃない。
仕方ないなぁ、と城崎のグラスにビールを注いでいると、蛇目が瓶を抱えて俺に微笑んだ。
「主任、お注ぎします。」
「あー、いいよ。俺飲まないから。」
「あれ?そうなんですか?」
「蛇目の分注いでやるよ。ほら、グラス出しな。」
蛇目の分も注いでいると、蛇目の後ろからグラスが2つ現れた。
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