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第607話

「俺のも注いで♪」 「望月さん、俺のも!」 蛇目の後ろから現れたのは、涼真とちゅんちゅん。 なんかいつものメンバー揃ってきたなぁ…。 「はいはい。ビールでいいの?」 「おう。」 「ありがとうございます、望月さん!」 俺が注いだビールを、三人は乾杯して飲み始めた。 仲がよろしいことで。 ビールを一杯飲み終えたちゅんちゅんは、そわそわした表情で蛙石くんの隣に座った。 「ねぇねぇ、俺2年目の雀田です!突然だけど蛙石くんのあだ名考えたから発表してもいいすか?」 「え…」 「蛙石皇太だから、ケロ太!どうっすか?我ながらいいネーミングセンスだと思うんだけど!」 「は?」 ちゅんちゅんはドヤ顔で言い放ち、言われた蛙石くんは嫌そうに口元を歪ませた。 後ろでは涼真が「おお!」っと、キラキラした顔で拍手している。 「いいじゃん!いいじゃん、ケロ太くん!」 「よくないですよ!!」 「へぇ〜。ケロ太ね。」 「違います!!!」 涼真と城崎にケロ太認定されてしまった蛙石くんは、ムキになって言い返す。 ケロ太…、いいあだ名だと思う。 「よろしく、ケロ太。」 「望月主任?!」 「ケロ太、俺から何を学びたいんだっけ?」 「も、もういいです!!みんなで馬鹿にして!」 城崎に揶揄われ、ケロ太は半べそかきながら席を離れた。 「やりすぎたかな…?」 「え〜?俺は愛称のつもりで…。」 「ちゅんちゅんに悪気ないのはわかってるよ。でも本人嫌がってるのに、寄ってたかってやりすぎたかなぁって。」 「先輩は優しすぎます。俺はやっと離れてくれてせいせいしました。」 「おまえなぁ…。」 城崎は安心したように俺に擦り寄った。 すぐそばには俺たちの関係を知ってる人しかいないから、気が抜けたのだろう。 「俺たち蛙石の様子見てくるよ。」 「よろしく。」 涼真とちゅんちゅんは少しバツが悪そうな顔をして、廊下に向かった。 俺と城崎と蛇目の三人だけになり、城崎は「あ。」と思い出したように声を出す。 「蛇目さん、さっきはすみませんでした。」 「え?」 「あと、ありがとうございました。次から気をつけます。」 蛇目はキョトンとした顔で城崎を見つめる。 俺はちゃんとお礼を言えた城崎を、よしよしと撫でた。 「あぁ、そういうことですか。なんだ、びっくりした。」 「悪いですか?」 「いえ。城崎くんも可愛いところあるんですね。今の見て、少しキュンとしてしまいました。」 「キモいんでやめてもらっていいですか?」 「こら!」 相変わらずこの二人は水と油だ。 城崎はツーンと蛇目と反対側を向いて飯をつついていた。

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