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第608話

気まずい空気の中、飯を食っていると、涼真とちゅんちゅんが帰ってきた。 「ダメだ〜…。蛙石拗ねちゃって俺たちの話聞いてくれなーい。」 「そんなに悪いあだ名でしたか…?」 涼真は呆れた様子で、ちゅんちゅんは少ししょんぼりしている。 二人の様子を見て、蛇目が席を立った。 「私も様子見てきます。ついでに今日主任にお願いされたことも種蒔いてきますね。」 「おー。頼む。」 蛇目が廊下に姿を消したのを見て、城崎がムッとした顔で俺の腕に擦り寄ってきた。 「お願いって何?あいつに何か頼んだんですか?」 「え?あぁ。城崎が蛙石くんに追いかけられて困ってるから、蛇目からも伝えてほしいって相談したんだよ。」 「………」 「どうした?」 「俺以外の人に相談とかお願いしてることに嫉妬してるけど、俺のこと心配してお願いしてくれてるから嬉しくて、複雑な気持ちです…。」 「そこは素直に喜べよ。」 う〜っと唸りながら俺に引っ付く城崎。 可愛いけど、他の人に見られたくないなぁ。 「城崎。」 「なんですか…。」 「可愛すぎるから、今甘えるの禁止。」 「じゃあ先輩はずっと可愛いから外出禁止です。」 「ぶはっ!なんだそれ(笑)」 むくれる城崎を宥めていると、ちゅんちゅんがこっちを見てニマニマしていた。 「ラブラブですねぇ〜。」 「うるせー。見んな。」 「城崎さんもそんな甘えるんすね。」 「うちの城崎は可愛いぞ。」 城崎の肩を抱き寄せて自慢していると、他の同僚たちもわらわらと寄ってきた。 あんまり距離近すぎても怪しまれるので、そっと肩から腕を離すと、みんなに見えないところで指を絡めて手を握られた。 「あれ〜?さっき二人イチャついてなかった〜?」 「イチャついてないですよ。飲みすぎて幻覚でも見たんじゃないですか?」 「あはは〜。そうかもぉ〜。」 みんなが酔っててよかった。 気を抜けば、すぐに癖みたいに城崎と触れ合ってしまう。 恋人なんだから、近くにいたら触れたくなるのは当たり前だよな。 城崎はなんだかソワソワした顔で、俺の耳元に顔を近付ける。 「早く帰りたい…。」 「…っ」 小声で言われたその言葉に含まれた、俺たち二人だけが知ってる意味。 俺だって、早く帰りたい。 絡めた指を動かしてアピールする。 周りみんな酔ってるし、アルコールは飲んでいないけど、この場に乗じて城崎にもたれかかっちゃダメかな…? 「先輩…?」 「ちょっとの間だけ…。」 城崎の肩に頭を乗せる。 周りに何か言われたら、酔ってるってことにしちゃお。

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