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第611話
目を覚ますと、いつもと違う場所。
そういえば昨日、家まで待ち切れずにホテルに寄ったんだっけ…。
で、夢中になり過ぎて終電逃して今。
部屋は電球色で温かみのある室内灯に、清潔感のある白を基調とした部屋。
ラブホだからか、窓はなく開放感はない。
大きなベッドに乱れたシーツ。
ベッド脇にあるゴミ箱は、ゴムとティッシュで溢れかえっている。
もちろん俺は裸で、隣には裸の城崎。
スーツは丁寧にハンガーにかけられていた。
「先輩おはよ〜…♡」
「わっ!?」
「昨日も最高でしたね♡」
上体を起こしている俺のお腹に、城崎は腕を回して擦り寄ってきた。
可愛い……。
「何時に帰る?」
「ん〜…。お風呂入ってから?」
「わかった。城崎、先入る?」
「何言ってんの。一緒に入るに決まってるでしょ。」
城崎は俺の頬にキスして、お湯を溜めに浴室へ向かった。
当たり前のように一緒に入るって、いつか恥ずかしさすら忘れてしまいそうだ。
「先輩、立てる?」
「おー、……うわぁっ?!」
「あぶな…。立てないなら立てないって、言ってくれないと。」
城崎の手を掴んでベッドから降りようとすると、足に力が入らなくて体勢が崩れた。
咄嗟に城崎が支えてくれたから、転けたりはしなかったんだけど…。
「抱えていい?」
「悪い…。」
「謝らないでください。俺が抱っこしたいだけなんで♡」
城崎にお姫様抱っこされ、浴室に連れていかれる。
急遽泡風呂に変更し、浴槽の中で頭のてっぺんから足の先まで丁寧に洗われた。
「先輩、もうすぐ俺たち、付き合って1年ですね。」
「そうだな。早いな。」
「ほんと、あっという間でした。でも思い返すと素敵な思い出ばっかりで、先輩とお付き合いできて、俺は本当に幸せ者です。」
今日は4月16日。
城崎と付き合い始めたのは、去年の4月30日。
「何か祝う?」
「先輩と二人きりで過ごしたいです。」
「毎回それしか言わないじゃん。」
「俺にとって、先輩と居れることが最高のプレゼントなんですよ。」
湯船で背中から抱きしめられて、首筋にたくさんキスされる。
俺だって城崎と居れたら、それだけで幸せだけど。
城崎って記念日とか大事にしそうだから、何かしたいかなって思っただけで…。
「本当に俺と居るだけでいいの?」
「はいっ♪」
「三連休だし、旅行でもいいぞ?」
「家でまったり過ごすのも大好きです♡」
城崎がそう言うなら、それでいいか。
ゴールデンウィーク、どこも混むし。
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