615 / 1069
第615話
二週間が経ち、今日は4月29日。
つまり今日からゴールデンウィーク。
そして明日は付き合って1年記念日だ。
「先輩、おはよ♡」
「んっ…、おはよう。」
啄 むようなキスがたくさん降ってきて、甘い朝を迎える。
城崎はご機嫌らしい。
「先輩、最終確認ですけど、本当に本当にどこも行かない?俺と家で過ごすってことでいいんですか?」
「うん。いいよ、それで。」
「で、5月3日は水族館デートですよ?もうチケット取ってるから絶対ね?」
「うん。わかってる。」
「あとね、麗子ママが祝ってくれるって。5月5日どうですか?貸切できるって。」
「じゃあお言葉に甘えようかな?」
「やった!じゃあ返事しておきますね!」
城崎は声色から分かるくらい嬉しそうだ。
タタターンッとスマホで何かを打って、ベッドに投げ捨てた。
おそらく麗子ママに返事したんだと思う。
「先輩」
「どうした?」
「朝から先輩のこと愛したい。ダメ?」
「いいよ。でも先に飯食いたいかも。」
「わかりました!」
城崎はベッドから出て、キッチンの方へ走っていった。
間もなく珈琲のいい香りと、バターの匂いが漂ってくる。
「先輩っ!できました!」
「サンキュ。………うん、美味い。」
「よかったぁ〜。今日はね、美味しい食パン買ってきたんです。」
「ふっ…(笑)いつの間に?」
「昨日の営業の帰り。このパン屋さん、最近話題なんですって。先輩知ってます?」
「あー、なんか聞いたことある。テレビでやってた。」
紙袋を見ながらそう返事した。
城崎はキッチンからコーヒー豆の袋も持ってきた。
「先輩、これもね、ちょっといつもより高いやつ。」
「へぇ〜。たしかにいつもより味深いかも。どこの?」
「○○の交差点曲がったところにあるんです。これも営業先で聞いて…」
城崎は楽しそうに話し始めた。
可愛い。
俺との記念日のために、いろんな特別を揃えてくれたんだ。
「でね、これが…」
「城崎、大好き。」
「えっ!?待って!もう一回!」
浮き足立っている城崎に軽いジャブ。
案の定聞き逃して焦ってる。
「愛してるよ、城崎。」
今度ははっきり伝えると、城崎は堪らない顔をして俺を抱きしめた。
ともだちにシェアしよう!