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第628話
リビングに入ると、城崎は既にいた。
「先輩かわいい〜♡」
「城崎…、それ……」
「あ、覚えてますか?」
そりゃあ覚えてる。
城崎は初デートの時と同じ、チャコールグレーのセットアップ。
長身で抜群のスタイルに似合ってて、女の子たちがすれ違うたびに振り返ってたのが印象的だ。
ただ去年と違うのは、お揃いのネックレスにお揃いの腕時計。
事前に何も言ってないのに、お揃いのものを付けてくれているのが嬉しかった。
「行こっか。」
「うん。」
出る前にキスをして、手を繋いで家を出た。
あー、ヤバい。
まだデートは始まったばかりなのに、心臓がドキドキする。
「昨日のシャンパン、美味しかったですね。」
「…うん。」
「案の定、先輩は酔っちゃいましたけど。」
「…うん。」
「すげーエッチだし、可愛いし、骨抜きにされちゃいました。」
「…うん。」
「…………先輩、もしかして緊張してる?」
「!!」
顔を覗き込まれて、びっくりして背筋がピンっと立つ。
やべー。上の空で返事してたのバレた?
「き、聞いてなかったわけじゃ…!」
「わかってますよ。ていうか、もう1年も付き合ってるのに今更緊張って…(笑)」
「仕方ねーだろ!?なんか……、いつもより…格好良く見えんだよ……。」
「…っ///」
本音を言うと、次は城崎が照れて言葉を失った。
何だこれ。俺たちめちゃくちゃバカップルじゃん。
「周りから、どう見えてんだろうな、俺たち。」
「わかる人はわかるでしょ。お揃いの時計とかアクセ付けてて、手繋いでたら。」
「バレたらダメなんじゃ…」
「俺はいいってば。会社の人にさえバレなきゃいいでしょ?嫌?」
「嫌じゃない…。」
城崎が他の女の子に迫られたら嫌だし…。
じゃあ俺と城崎が付き合ってるって、分かってた方がアプローチしてこないかも…?
いやいや、逆に相手が男だって分かったら、熱烈にアプローチしてくる可能性もあるのか…?
「なに百面相してるんですか?」
「んー…、城崎取られたくないなって…。」
「そんな可愛いこと言ってたら、今すぐ襲っちゃいますよ?」
「本気で言ってんだけど!」
「大丈夫。取られるもなにも、俺は先輩以外に興味ないから。先輩しか愛せないですよ。」
うぅ…。
この顔でそのセリフは強すぎる…。
「周りの目、気にしないでデートしたい…。」
「俺はあんまり気にしてないですけど。」
「俺は気になる…。」
「早く偏見のない世の中になるといいですね。」
「うん…。」
めちゃくちゃ甘えたい気持ちを抑えて、城崎と駅まで向かった。
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