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第630話

電車を降りると、俺たち同様に水族館に行くんだろうなって感じのカップルや子連れがたくさんいた。 俺たちも、周りからそう見えているのだろうか? 改札を出て、城崎と手を繋ぎながらそんなことを思った。 「お昼は館内で食べますか?」 「うん。去年と一緒のとこで食べる。」 「わかりました。」 近くのレストランやラーメン屋を通り過ぎ、真っ直ぐ目的地へ向かう。 10分ほど歩き、水族館の入場口に到着した。 「大人2人で。」 「はい。こちらにQRコードをどうぞ。」 城崎がネットで予約してくれていたから、画面のQRコードで認証して入場する。 去年のチケット、実は今でも残してるんだよな。 今年は紙じゃないから残らないのか…、と少し残念に思っていると、城崎が入り口前のペンギンのオブジェを指差した。 「先輩、あそこで写真撮りませんか?」 「へ?」 「あれ、日付書いてるじゃないですか。一年ぶりの今日行ったって分かるように思い出。どうですか?」 「撮る!」 入り口前に設置されて写真コーナーで写真を撮ってもらい、かわいい額縁と一緒に購入する。 同年代くらいの男性スタッフから写真を手渡される。 スタッフは常に笑顔だから、内心俺たちの関係をどう思ってるかなんて表情からは読めない。 だから変に気にすることもなかった。 入り口に入ってすぐ、トイレが目に入る。 隣を歩く城崎の袖をツンツンと引っ張った。 「どうしたんですか?」 「さっき、あとで聞くって言ってくれたお願い、今してもいい?」 「いいですよ。何ですか?」 言って…いいよな……? 「キス…したい…。」 「っ…!」 「いい…?」 耳元で呟くと、城崎はびっくりした顔で俺を見た。 すぐに俺の手首を掴んで、トイレに向かい、誰もいないことを確認して、二人で個室に入った。 「んっ!……ふ…、んぁ…」 力強く抱きしめられて、でもキスは優しくて。 言葉じゃなくても、城崎から大好きだって気持ちが伝わってくるのが嬉しい。 「んぅ…っ、ん♡あっ…」 「先輩、もう少し声抑えて…」 「ぅ…ん…っ」 クチュクチュ水音が立ってるのはいいのかと疑問ではあるけど、漏れる声を必死に抑える。 足をモジモジさせていたら、脚の間に城崎の脚が割って入ってきて、動きが取れなくなった。 「ごめん。先輩可愛すぎて我慢できない。」 「……?」 「ごめんね、先輩。声、我慢して。」 「ひぁっ…?!」 キスだけだと思ってたのに、ズボンの中に手が入ってきて、思わず声が出た。

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