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第636話

熱帯魚コーナーに到着。 どこの水族館もそうだけど、熱帯魚コーナーってなかなか手が込んでる。 「去年より展示の仕方上手いな。」 「ですね。あ、見てください。」 「ん?」 城崎に手を引かれ、水槽を覗く。 そこには見覚えのある魚が……。 「あ。もしかして沖縄でダイビングしたときに見たやつか?」 「ピンポーン!それです!」 「懐かしいな〜。あれ、またやりたいな。」 「今度は社員旅行じゃなくて、二人きりで行きましょうね。」 「うん。」 ゆっくり熱帯魚コーナーを見て回って、最後にふれあいコーナーに到着。 相変わらず小さい子どもが多い。 「本当にするの?」 「なんだよ。城崎もすればいいじゃん。」 「俺はいいです。ていうか、向こうにしたら?エイとか。」 「エイも触るけど、ドクターフィッシュ楽しいじゃん。」 ドクターフィッシュが放たれた水槽の前にある椅子に座り、靴下を脱ぐ。 隣では子どもたちがキャッキャとはしゃいでいる。 「声出しちゃダメですからね?」 「わかったわかった。城崎も隣座れよ。」 「足は入れませんけどね。」 「はいはい。」 何度目かの城崎の注意を受け、俺は足を水槽に入れた。 新しい餌が来たと言わんばかりにドクターフィッシュが寄ってきて、俺の足を取り囲む。 「うわっ!あっ、ふふっ!待って!!あはは!」 「先輩……」 「うぅ〜……、ふふっ、ひゃ…」 思いっきり笑っちゃって、呆れる城崎を見て、声を我慢しようと口を(つぐ)む。 でも擽ったすぎて、どうしても声が漏れ出る。 隣に座る城崎の腕をぎゅうっと掴んで耐えようとするが、ダメだ。 「ん〜、んっ、うぅ……」 「先輩……、逆にエロいんですけど。」 「ふっ…、ん……?」 「もう終わり。」 城崎は俺の足を水槽から出し、ハンカチで拭いた。 指の間まで丁寧に拭いてくれるから、時々擽ったくて声が出る。 「はい。行きますよ。」 「えー。他のは?」 「もうダメ。」 「なんで?触りたい。」 「ダメ。」 「魚にも嫉妬すんの?」 「そういうことでいいです。」 スタスタ進んで、とうとう出口に辿り着いた。 えー…。俺なんかした? 「なぁ。怒ってんの?」 グイッと腕を引いて、城崎の顔を見てびっくりした。

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