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第643話
城崎がわざとらしく、べっと舌を見せる。
熱い舌先でいっぱい弄くり回してほしい。
吸って、弾いて、噛んで…、そんな強い刺激が欲しい。
たくさんの期待を含んだ瞳で城崎を見ると、城崎は満足そうに笑った。
「どうしてほしい?」
「ど、どうしてって……」
「言わなきゃ分かんないよ?」
「…………っ」
その顔、わかってるくせに。
本当に意地悪だ。
「む……」
「む?」
「胸とお尻、同時にシ「お待たせ〜♡あら?」……」
「「…………。」」
タイミング………。
いや、よかったのかも。
二人きりでもないのに、ヤバいこと口走りそうになった。
「麗子ママ、空気読めなさすぎない?」
「えっ?えっ?」
麗子ママは突然城崎に睨まれて不思議そうだったけど、ソファに押し倒されて真っ赤になっている俺と目が合い、ハッとして目を逸らした。
「ごめんなさいっ!ダメだったわよね?!出直すわねっ!」
「い、いいです!お酒もらいます!!」
「あ、待って!綾ちゃん、それは……!」
俺は体を起こし、身なりを整えて、麗子ママの持ってきたお酒を奪うようにもらい、栓を開けて一気に煽った。
あれ……?
「なんかふわふわする…」
「あらぁ…。」
「麗子ママ、先輩飲んだの何?」
「うちで一番度数高いお酒よ。アレは夏くん用に持ってきたのに…。」
「マジか。」
ふわふわすると思ったらガンガンしてきて、すぐそばにいる城崎にもたれかかる。
城崎はしっかりと俺を抱きとめ、ソファに寝かせてくれた。
「頭痛い……」
「自業自得ですよ…。飲む前にちゃんと度数確認しなきゃ。」
「ごめん…。ちょっと休む…。」
「はいはい。」
城崎に膝枕してもらいながら体を休める。
やらかした…。
頭ガンガンする…。痛い…。
「先輩、寝てもいいよ?」
「うん……。悪い………。」
「大丈夫。責任持って連れて帰りますから。」
こんな時でも城崎は俺に甘い。
俺、酒飲まない方がいいのかな…?
「綾ちゃーん、ごめんなさいね。」
「俺の方こそ、ごめんなさい…。」
麗子ママが申し訳なさそうに謝る。
俺が勝手に奪って飲んだだけなのに。
麗子ママにも悪いことしたなぁ…。
城崎によしよし頭を撫でてもらっていると、多少は頭痛も和らいで、いつのまにか自然と眠ってしまった。
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