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第644話

「うっ……」 ズキンッと頭が痛み、目を覚ます。 あれ…? そうか。俺、さっき…。 「あ、綾ちゃん?!起きたの??」 「……城崎は?」 「な、夏くん?夏くんはね、ちょっと今席を外してて…」 「そっか。………トイレ。」 「綾ちゃん、その前にお水飲んだらどうかしら?強いお酒飲んじゃったし!ね?」 「麗子ママ、ありがと…。でも先トイレ…。漏れそう…。」 寝ちゃう前、食事と一緒に飲み物も結構飲んでたしな。 トイレのドアに手を掛けると、中から二つの声が聞こえる。 「ねぇ、いいでしょ?」 「ダメだって。無理だから。」 「そんなこと言って〜。僕にだけ特別だったじゃん?」 一つは城崎…だと思う。 もう一人は……、誰? 「城崎……?」 キィ…とドアを開けて、そして俺はドアを開けたことを後悔した。 「先輩……っ?!」 「な……んで……?」 城崎が知らない人とキスしてた。 どうして? なんで? 体の温度が一気に下がって、変な汗が出てくる。 「あ…、えっと……」 「先輩、誤解です!!」 「悪い…。邪魔したな…」 「先輩!!」 逃げなきゃ。 これはきっと何かの間違いだ。 夢……、そう、きっと夢だ。 お酒飲みすぎて、変な夢……。 「痛…っ」 焦って走ったから、躓いて体勢を崩す。 あれ……?痛いじゃん……。 痛いってことは、現実ってこと? 「なんで……?」 胸が痛い。息が苦しい。 「はぁっ…、はぁ…」 「綾ちゃんっ?!」 「………苦しぃ…っ」 「落ち着いて?深呼吸して?」 トイレに続く通路で倒れている俺を見つけて、麗子ママが駆けつける。 それとほぼ同時に、トイレの方から城崎が走ってきた。 「先輩っ!!」 「……っ、はぁっ、はぁっ…」 「夏くん、ちょっと任せたわよ?ビニール袋取ってくるから!」 「お願い。」 麗子ママは城崎に俺を預け、店の方へ戻ってしまった。 過呼吸って…。 俺、どんだけメンタル弱いんだよ? 「先輩、深呼吸して…。できる?」 「はぁっ…はぁっ…、んっ……!ゃ…ん……っ」 息を整えられないでいると、城崎に唇を重ねられた。

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