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第653話

いつもと違うアラームの音。 目を覚ますと、懐かしい風景。 あぁ、そういえば涼真の家に転がり込んだんだっけ…。 「おはよ…。」 「おー。おはよ。」 「頭痛い…。」 「マジか。熱測る?」 涼真に体温計を手渡され、腋に挟む。 喉も痛いし、鼻水も出るし、これ多分…。 「………38.7度。」 「おー…。随分高いな。」 「しんどい…。」 「寝とけ。ベッド使っていいよ。」 涼真の言葉に甘えてベッドで眠る。 氷枕と冷えピタを持ってきてくれる。 冷たいのが気持ちいい。 「綾人、食え。」 「ん…、なに……?」 「卵粥。食べられそうか?」 涼真は一人用の土鍋に卵たっぷりのお粥を作ってくれた。 なんか懐かしい。 付き合ってすぐ、俺風邪引いて、城崎に看病してもらったんだよな…。 そのときも卵粥だった。 「ありがと…。」 美味しい。 城崎の作ってくれたお粥と味が似てる。 もしかして風邪の時って、味覚バグるのかなぁ…。 なんか泣きそう…。 「おー。………それさぁ」 「うん?」 「……城崎のレシピ。」 「ゲホッ…!はっ?え?」 涼真が突然城崎の名前を出すから、思わず咽せた。 なんで突然?? 「昨日綾人が寝たあとさ、あいつ来たよ。すげー息切らして、ずぶ濡れで、おまえのこと探してた。」 「…………」 「綾人もずぶ濡れだったって口滑らせたらさ、風邪引いてないかってすげー心配してて、そんでそのレシピも送ってきたんだわ。」 城崎……。 なんで俺のこと探すの? あの子と一緒にいたくせに…。 バレてないと思ってんの? 俺、あの子に宣戦布告されたのに。 「話してよ、綾人。何があったんだ?」 「…………」 「言葉にしなきゃさ、解決しないぞ?分かるだろ、それくらい。」 涼真も呆れてる。 言わなきゃ…だよな……。 心配も迷惑もかけて、理由言わないとか…。 しかも親友だし、相談してもいい…よな? 「なぁ、綾人…」 「………浮気された。」 「は?」 俺の言葉に、涼真は目が点になっていた。

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