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第655話

翌日には体調も概ね回復したけど、この週末は涼真の家に居させてもらうことにした。 「悪いな。彼女呼びたいだろうに。」 「あぁ、大丈夫。なんか仕事あるんだって。」 「へぇ。週末なのに?シフト制?」 「うーん。医療系だから?」 「でも医療事務って暦通りだと思うけど。」 「「……………。」」 部屋の空気が一気に重苦しくなった。 いやいや、俺が浮気されてたからって、たまたま涼真まで浮気されてるなんてそんなこと……。 ない……よな……? 「余計なこと言った。悪い…。」 「いやいやいや。うん、大丈夫。俺は大丈夫だから。ちなみに綾人も絶対大丈夫だから。勘違いだからそれ。」 「俺のは事実だから…。」 「でもほら、ラブホ入ったから絶対するってわけじゃないじゃん?な?大雨だったし!雨宿り的な!」 「あの時は雨降ってなかった。」 「…………。」 沈黙。 思い出したら泣きそうになるからダメなんだって…。 「だぁ〜っ!!もう!!クヨクヨしてないでパーっと遊びに行こ!な?」 「うん…」 「ラーメン食って、綾人の好きな甘いの食って、映画見て、カラオケ行って、どう?!」 「ぶはっ…(笑)うん、そうする。」 「よし!そうと決まれば行くぞ!準備!」 「はーい。」 服を着替えて外に出る準備をする。 涼真と遊ぶの久々だ。 二人でよく行ったラーメン屋に行って、今話題のアクション映画を見て、カフェで特大パンケーキ食って、カラオケでフリータイムで歌いまくって。 まるで学生に戻ったみたいな気分だった。 涼真がいるおかげで笑顔になれた。 悲しいことを忘れて、楽しいことだけ考えられた。 「パンケーキでかかったなぁ。」 「うん。俺もあんな大きいの初めて。」 「次はもっとでかいの食おうぜ?あー、でも生クリーム多めだったらキツイかもなぁ。」 「俺が食うから大丈夫だよ。」 「綾人は甘いの無限に食えるもんなぁ。」 「無限には無理だけどな。」 写真を見返して二人で笑う。 あーあ、楽しかった。 城崎もいたらなぁ…。 『先輩、そんなに食べたら太っちゃいますよ?まぁ俺は先輩がぷにっとするのも大歓迎ですけど♡』 『先輩、今の映画めちゃくちゃよかったですね!Blu-ray出たら、また家で鑑賞会しませんか?』 『先輩、カラオケって暗くて密室で、なんかドキドキしませんか?俺はしちゃいます…。キス、してもいいですか?』 想像して顔が熱くなった。 俺って、城崎のことばっか考えてんじゃん…。 離れなきゃなのに…。馬鹿だなぁ、俺…。 「綾人〜、帰るか?」 「おー。」 「明日は仕事の後、ちゃんと家に帰れよ?」 「……………」 「……ったく。明日は家()れねぇからな。」 「酷くない…?俺ら親友だろ?」 「城崎は綾人が出ていったこと、納得してないだろ。そうじゃないと探しにこねぇと思うし。ちゃんと話せ。」 涼真は親友だ。 親友だからこそ、こうやって俺たちを向き合わせようとしてくれてるんだと思う。 「わかったよ…。」 「分かればよし。」 明日一度家に帰ることを約束に、今日も涼真の家に泊めてもらった。

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