658 / 1069
第658話
あー、なんか犬とか猫とか、前にも聞かれたなぁ…。
違うや。タチは挿れる方って、倉科さんが言ってた。
「じゃあ俺は…ネコか…。」
「え?マジ?!ね!あっちでシよっ?絶対気持ち良くさせてあげるから!」
グイグイ腕を引かれ、路地裏に連れていかれる。
一人に腕を押さえられ、もう一人は俺のズボンを膝下までズラす。
「お兄さん、ローションいる?」
「いやいや、なしでいいっしょ!どうせザーメンで濡れるって!」
「それもそうか!」
ぬるりとお尻の割れ目に熱くなったペニスを押し当てられる。
やだなぁ…。
でも、なんかもうどうでもいいや…。
今、何も考えたくない…。
「ちょっと!こんなところで何してるんですか?!」
「はぁ?おまえ誰だよ。」
「どう見ても同意に見えないから声かけたんです。コッチの人間なら分かるでしょう?マナーも知らないんですか?」
「はぁ?あーあ、せっかくいいとこだったのに萎えた。行こうぜ。」
「それな。あんたもう少し空気読んだ方がいいよ。偽善者。」
誰かが助けてくれたらしい。
解放されてその場で座り込んで、助けてくれた人を見上げる。
「大丈夫ですか…って、主任?!」
「………蛇目?」
「何してるんですか!今襲われそうになってたんですよ?!」
助けてくれたのは蛇目だった。
情けないところ見られたな…。
すげー焦ってんじゃん。
そりゃそうか。上司が路地裏でヤられそうになってんだもんな。
「主任、どうされたんですか?城崎くんのところに行ったんじゃ……。」
「振られた……。」
「え?」
「俺、帰る家なくなったんだ。恋人も、家も失った。」
自分で言ってて情けない。
キツ…。
「ちょ…、待ってください…。意味が分からないです。城崎くんが?主任のことを振ったんですか?」
「だからそう言ってんだろ。何回も言わせんなよ。」
「あぁ、一体どうなってるんですか?とりあえずここは危ないですから。家 、来ますか?」
蛇目に誘われ、その誘いに乗りそうになる。
これは浮気になんのかな…?
あー…。振られたし、もう浮気じゃないのか。
でも、俺に好意を寄せてくれてる人に頼るのって、なんか利用してるみたいでダメだよな…。
「いい。その辺の宿探す。助けてくれてありがとな。」
「本当に大丈夫ですか?」
「うん。蛇目も気をつけて。」
「いやいや、放っとけないでしょ。宿見つかるまで一緒にいますよ。」
「大丈夫だから。」
「ついさっき襲われかけてた人が何言ってるんですか。ほら、探してください、宿。見つからなかったらうちに連れて帰ります。」
そう言われて、適当にホテルを探す。
蛇目も一緒に探してくれて、とりあえず今日泊まれるホテルを確保した。
ともだちにシェアしよう!