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第658話

あー、なんか犬とか猫とか、前にも聞かれたなぁ…。 違うや。タチは挿れる方って、倉科さんが言ってた。 「じゃあ俺は…ネコか…。」 「え?マジ?!ね!あっちでシよっ?絶対気持ち良くさせてあげるから!」 グイグイ腕を引かれ、路地裏に連れていかれる。 一人に腕を押さえられ、もう一人は俺のズボンを膝下までズラす。 「お兄さん、ローションいる?」 「いやいや、なしでいいっしょ!どうせザーメンで濡れるって!」 「それもそうか!」 ぬるりとお尻の割れ目に熱くなったペニスを押し当てられる。 やだなぁ…。 でも、なんかもうどうでもいいや…。 今、何も考えたくない…。 「ちょっと!こんなところで何してるんですか?!」 「はぁ?おまえ誰だよ。」 「どう見ても同意に見えないから声かけたんです。コッチの人間なら分かるでしょう?マナーも知らないんですか?」 「はぁ?あーあ、せっかくいいとこだったのに萎えた。行こうぜ。」 「それな。あんたもう少し空気読んだ方がいいよ。偽善者。」 誰かが助けてくれたらしい。 解放されてその場で座り込んで、助けてくれた人を見上げる。 「大丈夫ですか…って、主任?!」 「………蛇目?」 「何してるんですか!今襲われそうになってたんですよ?!」 助けてくれたのは蛇目だった。 情けないところ見られたな…。 すげー焦ってんじゃん。 そりゃそうか。上司が路地裏でヤられそうになってんだもんな。 「主任、どうされたんですか?城崎くんのところに行ったんじゃ……。」 「振られた……。」 「え?」 「俺、帰る家なくなったんだ。恋人も、家も失った。」 自分で言ってて情けない。 キツ…。 「ちょ…、待ってください…。意味が分からないです。城崎くんが?主任のことを振ったんですか?」 「だからそう言ってんだろ。何回も言わせんなよ。」 「あぁ、一体どうなってるんですか?とりあえずここは危ないですから。(うち)、来ますか?」 蛇目に誘われ、その誘いに乗りそうになる。 これは浮気になんのかな…? あー…。振られたし、もう浮気じゃないのか。 でも、俺に好意を寄せてくれてる人に頼るのって、なんか利用してるみたいでダメだよな…。 「いい。その辺の宿探す。助けてくれてありがとな。」 「本当に大丈夫ですか?」 「うん。蛇目も気をつけて。」 「いやいや、放っとけないでしょ。宿見つかるまで一緒にいますよ。」 「大丈夫だから。」 「ついさっき襲われかけてた人が何言ってるんですか。ほら、探してください、宿。見つからなかったらうちに連れて帰ります。」 そう言われて、適当にホテルを探す。 蛇目も一緒に探してくれて、とりあえず今日泊まれるホテルを確保した。

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