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第661話
仕事が終わって、涼真に飯に誘われる。
「で、どうしたんだよ?」
「ん〜…、やっぱ俺、ダメみたい。」
「何が?城崎と話すって言ってたじゃん。」
うん…。
涼真とはそういう約束で泊めてもらったし。
俺もそのつもりだった。
「話すどころか…。門前払い?」
「どういうこと?」
「家帰ったらさ、前言ってた元セフレの子が裸でお出迎え。俺、さすがに無理だ。」
「は?」
「そんな格好で出てこられて、城崎に会いたいとは、俺言えなかった。」
「………。」
じわっと目に涙を溜める俺を見て、涼真は無言で俺を抱きしめた。
「辛かったな。」
「ん…。」
「前も言ったけど、もし綾人が城崎と話したいなら、俺は間を取り持つつもりだよ。でも、綾人が話したくないなら、もういいと思う。」
「うん…。」
「前とは状況が違うみたいだから、無理にとは言わない。俺は綾人の味方だからな。」
「うん…、ありがとう。」
持つべきものは親友だ。
涼真がいなかったら、吐き出す相手がいなくて、悲しさでぺちゃんこに押し潰されていたかもしれない。
ぽろぽろと涙を溢す俺を、涼真は優しく見守ってくれていた。
「さすがに明日は来ると思うんだよ、城崎。綾人はどうする?」
「どうするも何も……。行くしかないだろ…。」
「一週間くらいなら休暇申請通るんじゃないかな。今は蛇目も来て、フォローできそうだし。」
「でも…」
「パーっとどっか出掛けてこいよ。一人旅っつーの?実家帰るのもありだと思うし。」
休暇申請か…。
そんな勝手な都合でいいのかな…。
逆に一人になったら、ずっと城崎のこと考えてしまいそうで怖い。
「明日決めたら?城崎見て、大丈夫そうなら働けばいいし、今会うのはしんどいなら申請出してみればいいじゃん。」
「うん…。」
「今の綾人見て、休むなって人はいないと思うよ。俺、綾人と仲良いからさ、すげー色んな人に聞かれたよ。望月くん大丈夫?って。みんな綾人のこと心配してた。」
「そっか…。みんなに心配かけてんだな…。」
「ポジティブに捉えろよ?みんなおまえのこと好きなんだって。」
営業部、みんな優しいからな…。
みんなの優しさに甘えて、忙しい中俺だけ休みをもらうのは気が引ける。
できるだけ、休みを取る選択肢は選びたくないけど…。
「もしかしたら、休みもらうかも。」
「それでよし。休みもらうかも〜くらいの気持ちでいいって。仕事は絶対とか、思わなくていいから。」
「うん。」
「で、今日うち来る?」
「いや、ホテル取ってるんだ。明日からはまた考える。ありがとう、涼真。」
「どういたしまして。明日早く来るから、いつでも頼って。」
「うん。本当にありがとな…。」
居酒屋を後にして、涼真と別れる。
食事はほとんど喉を通らなくて、お冷ばかりを飲んでいた。
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