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第671話

あのあと、母さんとはあまり話せないまま休みを終え、東京に戻った。 父さんは日曜はゴルフで家を空け、月曜からは仕事だった。 大翔は俺と母さんの様子を見て心配そうにしていたが、俺と二人きりの時は普通に甘えてきて、その大翔の変わらなさに安心したし、救われた。 でも、また母さんとちゃんと話さないとな…。 結局父さんとも話せてないし。 両親の説得はそう簡単にはいきそうにない。 「あ!綾人〜!」 「涼真。」 水曜日の夕方に東京に帰ってきて、仕事終わりの涼真と待ち合わせ。 今日は涼真の家に泊めてもらって、明日からはまた宿探しだ。 ビールやツマミを買って、涼真の家にお邪魔する。 帰ってきて早速、涼真はプシッ…とビール缶を開けた。 「で、どう?リフレッシュできた?」 「うーん…。まぁまぁ?」 「はー?なんだよ、それ。」 リフレッシュ…できたのかな…? 実家帰って安心したし、でも後半気まずかったな。 「両親に話してさ…、好きな相手が男だってこと…。」 「は?!なんで今?!リフレッシュ休暇だっつったろ?!」 「俺にも色々あんだよ…。」 「色々ってなに!!」 「………早く城崎とヨリ戻したいんだよ。」 城崎と向き合うための準備なんだ。 でも涼真は理解してくれず、はぁ〜と大きいため息をついた。 「おまえ休んでる間、城崎ミスばっか!皺寄せぜーーーんぶ俺に来るんだもん。大迷惑。」 「え?」 「早く仲直りしろってこと!!」 「いや、仲直りとかじゃなくて…。」 「浮気なんて寛大な心で許してやれよ。もう俺たち30だぜ?若いのはちょっと俺たちより目移りしやすいんだよ。仕方ないって。」 これは涼真なりの励まし…的な? 俺が城崎とヨリ戻したいって言ったから。 浮気絶対してないよ!とか嘘っぽい励ましじゃなくて、開き直った感じが涼真らしいというか。 「涼真、違うんだよ。浮気が許せない…のも、ないことはないんだけど、それよりそれぞれの将来考えて身を引いたっていうか…。」 「…………」 「いや、実際引いてはないんだけど。城崎とヨリ戻したいとか言ってるわけだし…。でも、俺の身の回りの整理する機会でもあると思うから。城崎にまた振り向いてもらえるように、俺頑張る…。」 「いや、もう向いてるし。おまえいないと城崎使いもんになんねーし。」 「そんなことないよ。城崎、調子悪いだけなんじゃないか?」 「てゆーか!!!綾人が元気ないのが嫌!!元気出せ、バカ!!!」 涼真がプンっとそっぽ向く。 俺のために怒ってくれるとか、本当……。 「涼真、ありがとな。」 「…………」 「おまえいい奴だな。」 「当たり前だろ!……もーー!恥ずかしいから飲むぞ!」 「おう。」 涼真は顔を赤くして、どんどん缶を開けていき、気づくと俺たちは風呂も入らずに寝落ちしていた。

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