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第675話

次の日、仕事に行く前に洗濯物を干そうと洗濯機を開ける。 「涼真〜。」 「ん〜?」 「俺の一昨日着てた服、洗濯してない?」 「えっ……、あー…、えー、ない……?」 「うん、ない。」 実家から帰ってきて涼真と宅飲みして、そのまま洗濯してくれるって言ってたから預けて…。 だから俺の服、この洗濯物の中に紛れてるはずなんだけど……。 「……おっかしいな〜?まぁ、出てくるだろ。」 「一人暮らしの家で、そんなつい最近の服なくなるか?」 「朝急いでたからな〜…。ごめん、ちゃんと探しとくよ。」 「いいよ、俺が探す。」 今は探してる場合じゃない。 仕事行く前に洗濯物干しちゃわないと…。 帰ったら探すことにして、とりあえず洗濯を干す。 「干し終わったよ。出れる?」 「うーん…、うん、出れる。」 「何、その間は。」 「出れます。」 涼真はスマホで誰かと連絡を取ってるらしい。 難しい顔しながら連絡する相手って、上司か? 「なー…、綾人……。」 「ん?」 「城崎のこと、嫌いじゃないんだよな?」 家を出て、電車に乗るまで涼真はずっとスマホと睨めっこしてた。 やっとやりとりが終わったのかと思ったら、会社の最寄駅に着いて改札を出てすぐ、涼真は俺に神妙な顔で尋ねた。 「え、うん。好きだよ?」 「でも城崎のところに戻るのは無理なんだよな?」 「うん…。戻りたい気持ちはある…。でも、昨日も言ったんだけど、過呼吸起こしちゃうから、話したりするのは今は難しいし…。」 「過呼吸治したいんだよな?」 「そりゃあ…。」 治せるなら治したい。 そしたら城崎から離れる理由は一つ減るし…。 「俺が思うにさ、慣れもあると思うんだよな。」 「慣れ?」 「一回触れてみるとか駄目っぽい…?」 「触れる……」 触れるってどれくらい? 昨日手を握られただけで動揺した。 動揺なのかな…?ドキドキって。 でもやっぱり触れられるのは嬉しかった。 びっくりして拒否してしまったけど。 「無理にとは言わないし、でも綾人も戻りたいって思ってて、会いたいって思ってるならいいんじゃないかなって。」 「………うん。」 「徐々に距離感戻していって、上手くいけば万々歳じゃん?綾人も頑張るって決めたんだろ?」 「……うん。」 「じゃあ今日の昼休み、会議室B取っとくから。話さなくてもいいから、一回城崎と二人きりになってみるのどう?怖かったらすぐ出てきたらいいよ。俺外で待ってるから。」 「……………うん。」 涼真が何故急にそんな提案をしてきたかは分からないけど、急遽城崎と二人になることが決まって、不安と期待で頭がいっぱいで仕事に集中できなかった。

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