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第680話
「なんで貸したの…?」
涼真の隣に座ってそう聞くと、涼真はばつが悪そうに答えた。
「綾人を家に泊めるって言ったら、持ってきてほしいって言われたんだよ…。でも今朝、綾人が気づいたから返してもらった。」
「……城崎、なんか言ってた?」
「久々にぐっすり眠れたって言ってたよ。あいつも寝れてないんだとよ。」
「そう…なんだ……。」
「お互いのために、早く元に戻れるといいんだけどな。」
城崎も眠れてないんだ…。
俺だけだと思ってた…。
本当にあの家には城崎一人だけってこと…?
じゃああの日、俺が見たのは?
たまたま会いにきてた…とか…?
家に……?
「痛っ!」
「まーたなんか考え込んでるだろ。」
涼真にいきなりデコピンされて、思わず額を押さえる。
普通に痛い。
「綾人が考え込むと、ろくなことなさそうだからやめな。」
「なにそれ。失礼だな。」
「事実だろ。」
痛かったけど、涼真のおかげで最悪な想像しなくて済んだ。
俺、こんなに自爆癖あったっけ…。
「てか、それ洗濯しねーの?」
「………城崎の匂いするんだもん。」
「…………お互い重症すぎるだろ。」
「「……………」」
ここまで好きで、なんで戻らねーんだよと、多分涼真はそう言いたくて俺を睨んでる。
俺は居た堪れなくて、ビールを取りに行くという建前で冷蔵庫へ向かった。
「最近綾人よく飲むな。」
「あー……、うん。」
「城崎見張ってねーから、ハメ外してんだ?(笑)」
涼真も諦めて話を切り替えてくれた。
安心して涼真の隣に座り、プシュッと缶を開ける。
「そーゆーこと。」
「元々酒飲むの好きだったもんな〜。すぐ潰れるけど。」
「うっせーなぁ。好きなんだからいいじゃん。」
「そりゃそうだ。」
涼真にはそう言ったけど、実際は別の理由。
酒の力を借りないと寝られない。
心配してる親友には言えない。
まぁ涼真はなんとなく気づいてそうだけど…。
ビールを3缶空けて、各々寝床に入る。
「明日頑張れよ。」
「うん…。」
「誤解解けてからでいいから、ちゃんと好きだって伝えな。そんで、思いっきり甘えてこい。」
「うん…。」
「綾人は愛されてるよ。俺が保証してやる。自信持てな?」
「わかった。」
涼真は俺の返事を聞いて、「おやすみ。」と寝てしまった。
俺も城崎の匂いの残るパーカーを抱きしめて眠りについた。
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