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第681話

翌朝、酒の力で何とか眠れたし、城崎の匂いのする服を抱いて眠ったからか、幸せな夢を見た気がする。 パーカーをぎゅっと抱きしめていると、ガバッと布団を捲られた。 「おはよー、変態の綾人くん♪」 「りょ、涼真…!!」 いきなり布団を捲られて寒い。 睨みつけると、涼真は俺を見てニマニマしていた。 「ていうか、変態じゃない!」 「え〜?恋人の匂いのする服嗅いでニヤニヤしてるやつのどこが変態じゃないって〜?」 「なっ…?!」 両手で抱きしめていたパーカーを慌てて背中に隠す。 恥っず…。 もう…、最悪……。 「まぁその調子なら、今日大丈夫そうか?」 「えっ…?」 「そんなに求めてるなら、いざ会ったら抱きついちゃうんじゃねぇの?大好きなんだもんな?」 「…そ…うかな……。」 恥ずかしくてカァッと顔が熱くなる。 そうだ。今日は城崎に会うんだ。 会って、あの日のことちゃんと確かめて、好きだってこと伝えて……。 「頑張れよ。」 「…俺、何したらいいかな…?」 「自分の正直な気持ち伝えるだけでいいだろ。」 「また過呼吸なったらどうしよう…?」 「城崎が助けてくれるだろ。俺行ってもいいけど、ダメなんだろ?」 「う…ん……」 涼真の申し出を断ったのは俺自身だ。 どうしようも何も、今日は頼れるのは城崎しかいない。 腹括るしかないか…。 「服、どうしよう…。」 「いつも通りでいいんじゃん?」 「なんか思い入れのあるデートとかで着た服とか着ていったら重いかな?」 「考えすぎだろ。普段通りでいいじゃん。」 「そうかな?………うん、そうだよな。」 納得しながらも、無意識に手に取ったのは、持っている服の中で一番触り心地がいいもの。 だって抱きしめられた時に気持ちいいって思ってもらえたら、もっとギュッてしてもらえるかもしれないし…。 「へー。可愛いじゃん。」 「?!」 「そーゆーの着るんだ、綾人。」 「変…かな…?」 「変じゃねぇよ。まぁ、襲われないようにな。」 「!!」 涼真がいちいち驚かせるようなこと言うから、言葉に詰まる。 とりあえず服を決め、身なりも整えて家を出る準備をする。 昼ごはんは冷蔵庫にあるもので適当に二人分作り、食べたあと城崎に連絡を入れた。 『予定通り15時に着くように向かう。遅れそうなら連絡する。』 そう送ったはいいものの、じっとしてるとソワソワするだけだったので、少し早いけど家を出ることにした。 「もう行くのか?15時だろ?」 「なんか落ち着かなくて…。」 「まぁ、頑張れよ。いってらっしゃい。」 「うん。行ってきます。」 小さい鞄に財布や定期などの必要最低限の物だけ入れて、家を出た。

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