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第691話
すごく幸せな夢を見た。
城崎とキスする夢。
夢の中だと発作は出なくて、満足するまで何度も何度もキスされて、キスを求めた。
夢なのにこんな満たされてる感覚、すごいな…。
今なら目を閉じるだけで夢を思い出せそう。
思わず身震いして、物欲しさに足を擦り合わせてしまう。
ダメだ。ベッドから出ないと……。
「ふぁ……、ん〜…………。」
ここまでぐっすり眠れた感覚があるのは久しぶりだ。
ぐーっと伸びをして目を開くと、全く見覚えのない景色。
どこかのホテル…?
あれ?俺昨日どこで寝たっけ…?
ていうか、あれ?え?ホテルなんて取ったっけ??
「へっ?!」
実家に帰って、母さんに当たりそうになったから逃げるように実家を出て、それから東京に戻って居酒屋に入って、それから……。
それからどうしてた…?
ビール三杯飲んだところまでは覚えてる。
会計はした…よな…?
「はっ……!」
財布は………、ある……。
服も着てるし、鍵とかもある…。
キャリーバッグもドアのそばにあるし…。
てことは、酔った頭で自分でここまで来たのか?
てか、今何時?チェックアウト過ぎてない?!
ヘッドボードにある固定電話から、内線でフロントに繋ぐ。
『おはようございます。いかが致しましたか?』
「え、あっ、その、すみません。何時チェックアウトにしてましたっけ…?」
『609号室の望月様でお間違いないでしょうか?』
テーブルに置いてあるカードキーを見て部屋番号を確認する。
部屋番号も名前も間違いない。
「はい。」
『お客様は来月の8日朝チェックアウトとお伺いしていますが…。』
「へっ?!」
『ご変更でしょうか?』
「ちょ…、えっと…、あとでフロント伺います。すみません。」
訳がわからずに電話を切る。
どういうこと…?
来月の8日って、出張する日の朝までってことだよな…?
さすがに酔った頭でそこまで考えられるとは思えない。
もしかして誰かが一緒にいた…?
でも、俺が来月出張だって知ってるなんて、会社の人間くらいしか…。
いや、まさかな…。
事実確認するべく、フロントに……。
その前にシャワー浴びるか。
頭もボサボサだし、服も着替えたい。
さっとシャワーを浴びて、着替えてからフロントに向かった。
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