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第694話

ホテルに戻って、スマホを見る。 城崎にお礼のメッセージを送りたい。 それと、話し合いたいってこと…。 「ホテル、ありがとう。……近々会って話がしたい。お互いが出張のこと落ち着いたら、会ってくれないか?………変じゃねぇかな?」 何回も文字を打って、消してを繰り返す。 距離を置きたいと言って、もう一週間。 城崎から連絡はなかった。 俺が言ったから当たり前なんだけど、久々の連絡がすごく緊張する。 何回も読み返して、やっとの思いで送信ボタンを押した。 そしたら数十秒で、着信がきた。 「って、え?!で、電話…?!」 応答と拒否。 そんな二択、今の俺が選ぶのはもちろん…。 「………もしもし?」 『先輩っ?連絡してよかったんですか?!』 「へっ…??」 電話に出ると、開口一番勢いよくそう聞かれた。 連絡してよかったかって…。 したかったってこと…? 『先輩、身体平気ですか?体調悪くないですか?お酒の飲み過ぎはダメですよ。俺、すげー心配したんですから…。それに、一人であんなとこ行っちゃダメです!今後二度と一人であの辺には踏み入れないと誓ってください!!』 「ごめん。なんの話…?」 『覚えてないくらい飲むとか本当に危ないですから!たまたますぐに知れたから助けに行けたけど、俺がいなかったら先輩、他の男に食われてたかも…、うわ。考えたくもない。』 「お、落ち着けって…。」 『あー……もう……。』 「城崎……?」 勢いよく話していたと思ったら、城崎は突然無言になった。 不安になってもう一度名前を呼ぶと、城崎はため息を吐いた。 『俺は出張落ち着いてからじゃなくて、今すぐ会いたいです。』 「っ……」 『でも我慢します。先輩の心の準備もいるだろうから。先輩が話せそうなときに教えてください。』 「う、うん…。」 『それと、距離置くのもうやめでいいですか?明日から珈琲淹れていいですか?もう少しくらい話しかける量増やしていいですか?あー、あとご飯また持って行ってもいいですか?』 城崎は矢継ぎ早に質問してきた。 あまりの勢いに、俺は思わず吹き出してしまう。 「ふっ…ふふ(笑)多すぎ…(笑)」 『その笑いはいいってことで捉えますよ?』 「うん…。いいよ。」 『………大好き。先輩、早く会いたい。』 「うん…。俺も…、会いたい…。」 『…!!………待って、明日先輩見たら抱き締めちゃいそう…。』 「みんなの前だからダメ。……てか、もう切るぞ?ホテル、本当にありがとな。」 『あ、先輩待って!もうちょっとだk』 城崎が何か言いかけていたけど、会いたいって本音が出てしまったから、照れ臭くて途中で切ってしまった。 久々にこんな元気な城崎と話したかも…。 なんか悩んでるのが馬鹿だと思えるくらいに、いつも通りの城崎だった。 明日、普通に話せたらいいな…。 この一ヶ月、ずっと暗かった気持ちが、今の電話一つでかなり浮上した。

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