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第701話
涼真と別れ、ホテルに着く。
スマホの画面には一件だけ新着通知。
『先輩、大丈夫ですか?声、聞きたいです。』
涼真にはあんなに送ってたくせに、俺の機嫌伺いすぎだろ。
しつこくされても、俺が城崎のこと嫌いになれるわけねぇのに。
城崎の連絡先を開いて、発信ボタンを押す。
ワンコールで、すぐに声が聞こえた。
『もしもし!?先輩っ!』
「早ぇよ(笑)」
『先輩、大丈夫ですか?酔ってない?飲み過ぎてないですか??』
「うん。大丈夫。」
そばにいたら、すぐにでも飛びかかってきそうな焦り様。
俺のこと、そんなに心配なのかな?
もう30なんだけどな。
『電話、どれくらいできますか?』
「城崎の方が忙しいだろ。俺はあとシャワーして寝るだけ。」
『あ、シャワーまだなんですね。先済ませますか?』
「ううん。後でいい。それよりなんか話してよ。」
『えっ…、話?うーん、今日は大阪着いて、取引先の人と昼食に外出歩いてたら、ちゅんちゅんがいきなりたこ焼き食いたいとか言い出して……』
城崎は今日あったことを細かく、俺に話してくれた。
俺はベッドに腰掛けて、城崎の話に耳を傾ける。
ちゅんちゅんのバカ話とか、でも逆にその素直さが向こうの人にウケて話が進んだとか。
ただ今日あった出来事を聞いてるだけなのに、城崎の声を聞いてるだけで安心して、うとうとしてくる。
俺はいつの間にか、ベッドに寝転んで、夢うつつで話を聞いていた。
『でね……、先輩?………もしかして、眠い?』
「……ぇ、あー……、うん……」
『寝ますか?明日も仕事ですもんね。』
時刻は日付を跨いで0時38分。
もう1時間以上通話してる…。
瞼が重くて、今すぐにでも眠りにつけそうだ。
「んん……、シャワー……」
『朝にしたら?先輩もう寝ちゃいそう…。』
「………入る……」
朝早く起きるの嫌だし…。
シャワー入ってさっさと寝よ…。
ベッドに寝転んだまま、シャツを脱いで、ズボンを下ろす。
電話を切ろうと、その辺に置いたスマホを手探りで探し、ボタンを押した。
「城崎……、おやすみ……」
『ちょっ?!あっ!せ、先輩っ?!………うわっ!見んな!!…………切りますよ?絶対髪乾かして寝てくださいね!!』
電話越しに城崎の慌てた声が聞こえ、通話が切れた。
あれ?俺が押したボタン、なんだったんだ…?
まぁいいや…。眠い………。
眠すぎて、結局そのまま半裸で寝落ちしてしまった。
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