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第710話
「ふふっ。主任ってば、いきなり寝てしまったのでびっくりしました。」
「悪かったって…。」
新幹線を降りてから、可愛かっただの、寝息がなんだの、いろいろ言われた。
だって仕方ない。
薬飲み始めてから、眠くなることが増えた。
先生にも処方される時に聞いてたから、分かっていたことだけど。
仮にも部下の前で寝てしまうなんて…。はぁ。
「お疲れなんですね。私の前ではあまり気を張らないでください。」
「そんなこと言ったって…」
「城崎くんに申し訳ないですか?大丈夫ですよ。最初にも申し上げましたが、私同意がないと手は出しません。」
それはなんとなく分かってる。
今まで蛇目には何度も助けられたし、見ず知らずの男に犯されそうになったときも、俺だと知らずに助けてくれた。
でも城崎が蛇目のこと警戒してるのはたしかで、俺は今、城崎と関係を戻すために大事な時期だから。
「気を張ってるわけじゃない…けど、勘違いされるようなことはしたくない。」
「はい。」
「だから、少し距離感とか感じさせてるなら悪い…。」
「いえ。恋人思いなところも、主任が魅力的な理由の一つですからね。」
蛇目は本当大人だ。
今までどんな恋愛してきたんだろう?
俺の今の悩みも、話したらアドバイスくれたりして…。
「さて、お仕事頑張りましょうか!今日はジャンジャン契約取りますよ〜!」
「ぷっ(笑)急に気合い入るじゃん。」
「主任にいいところ見せて、乗り換えてもらうんですよ。」
「冗談よせよ。俺は一途だから諦めな。」
「ふふっ。ますます好きになっちゃいそうです。」
蛇目がジョークを言ってくるから、俺も冗談めかして返した。
俺と蛇目は仕事の相性は良いらしく、今日予定していた取引先は全て契約を結びつけた。
城崎と行っても契約は取れると思うけど、城崎の場合は俺いてもいなくてもいい感がすごくて、あまり仕事した感覚がない。
それだけ城崎がすごいってことなんだけど、仕事の充実感としては蛇目との方がやりがいがあった。
こんなこと知ったら、城崎怒るだろうな。
「主任のフォローのおかげで契約できました。ありがとうございました。」
「いや、あそこの蛇目の機転が良かった。俺も次から気をつける。」
「私も今日一日、とても勉強になりました。また明日もよろしくお願いします。」
「こちらこそ。じゃあおやすみ。」
ホテルに入り、蛇目と別れて部屋に入る。
ふかふかの布団にダイブ。
今日はなんだかよく眠れそう。
うとうとしていたら寝落ちてしまって、ハッとした頃にはいつのまにか23時。
スマホを見ると、城崎から2件の着信と5件のメッセージが届いていた。
蛇目と俺が二人きりだから、心配して寄越してくれたんだろうな。
電話をかけると、城崎はすぐに出てくれて、少し話して通話を終了した。
少しだった理由は、城崎が酔っ払っていたから。
俺以外の前で酔ってることに嫉妬してしまったのが恥ずかしくて、すぐに切ってしまった。
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