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第714話
起きるとホテル。
部屋に常備されたバスローブを着て眠っていた。
あれ…?俺って昨日、どこで寝たんだっけ。
ちょっとだけ酒飲んで…、うーん……。
スマホを見ると、城崎からの着信履歴5件。
疲れて寝ていたとメッセージを送る。
準備して向かうと、蛇目は既に集合場所で待っていた。
「主任、おはようございます。昨日大丈夫でしたか?」
「おはよう。悪いな。昨日迷惑かけたんじゃないか?」
「全然。主任ってば、お手伝いするって言ってるのに、一人で帰ってしまったので。その後心配してたんですよ?」
蛇目はくすくす笑う。
そっか。俺酔いながらもちゃんと自分で着替えたりしてたんだ。
よかった…。
「主任は本当にお酒ダメなんですね。さすがに次からは飲ませちゃいけないなって思いました。」
「え〜。好きなんだけどな。」
「あの酔いっぷりは、たしかに恋人ならダメって言いますね。城崎くんも忘年会や新年会シーズンは気苦労が絶えないでしょうね。」
「そんなに?」
「お酒に弱いのもそうですけど、すぐ顔が赤くなって、ぽやぁっとするのも、その辺の悪い人に攫われちゃいますよ?」
「なんだそれ(笑)」
攫われちゃうって、俺が?
ないない。
つーか、蛇目から見てもそんなに危なっかしいなら、俺本当にお酒飲まない方がいいんだろうな…。
気苦労が絶えないって、城崎に悪いことしたかな…。
「あとさ、昨日、本当にありがとな。」
「城崎くんとのことですか?」
「うん。やっと家に帰ろうって覚悟決めたんだ。揺らぎそうだったけど、おまえのおかげで決心できた。ありがとう。」
「主任に付け入る隙を自分で消してしまったのかと思うと、それはちょっと残念ですね。」
「バーカ。同意なかったら手は出さないがポリシーなんだろ?」
俺は蛇目のことを勘違いしていた。
こんなにいい奴だったなら、最初から色々話しておけばよかったな。
警戒なんかして、失礼なことしてしまった。
「蛇目って優しすぎて、色々損してそうだな。」
「そんなことないですよ。私は私なりに、色々楽しんでるので。」
「へぇ。それってどんなこと?」
「主任に言ったら引かれそうなのでやめておきます。」
「何だよ?気になるじゃん。」
「簡単に言うと、イタズラですかね。詳しいことは内緒です。」
「ふーん。俺にはするなよ?」
「さて。どうでしょうかね。」
蛇目は楽しそうにそう言った。
でもまぁ、今んとこ何もされてないし。
されたとしても、たかがイタズラだろ。
こいつの人の良さ考えたら、それくらいが釣り合い良いのかもな。
昨日の一件で完全に蛇目に心を許した俺は、気を張ることなく仕事ができた。
おかげで出張最終日も大成功で収め、無事東京に帰ってきた。
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