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第715話

「ただいま〜!!」 「おー。お疲れ、綾人。」 「悪いな、こんな遅くに。」 涼真の家に帰った。 でも、涼真に迷惑かけるのも今日が最後だ。 明日、城崎との同棲生活に戻ろうと思ってるから。 ……断られないよな? 待っててくれてるって、今もだよな…? 「何だよ。スッキリした顔してたと思ったのに、急に暗くなって。」 「いや、何でもない!なぁ、涼真。」 「ん?」 「俺、城崎のとこに戻る。」 「えっ?!おぉ!よかったじゃん!」 涼真は自分のことのように喜んでくれた。 本当、めちゃくちゃ迷惑かけたもんな…。 俺のために、すげぇ悩んでくれたり、色々提案してくれて…。 涼真には本当に助けられた。 「先週心療内科受けてさ、先生に色々相談したんだ。」 「よかった。いい先生だった?」 「うん。歳近いんだけど、すげーしっかりしてた。親身に話聞いてくれたし。同棲のことも、涼真が提案してくれた家庭内別居的な感じだったらオッケーもらったんだ!」 「ぷっ…(笑)家庭内別居って言ったの?」 「うん。なるほどなーって、先生感心してたよ。涼真が言ってたみたいに、少しずつ話したり触れたりして体を慣らしていけばいいって。」 「でも過呼吸なったりするのが怖いって言ってなかった?」 「薬もらったんだよ。これ飲んでから、震えとかもほとんど出なくなったんだ。」 涼真に薬を見せる。 飲みすぎないように、1日3錠七日分しか処方されてないから、あと一錠。 それに、睡眠剤は一回も使ってない。 「へぇ。これっていつまで飲むんだ?」 「急にやめたら離脱症状とかも出るらしくて、だから症状がなくなってきたら、少しずつ減らしていくんだって。」 「ほー。まぁ一生飲む必要はないんだな。」 「それは勘弁。これすげぇ眠くなるし。」 「そうなんだ?」 「副作用だから仕方ないらしいけど。それにお酒もできるだけ控えるようにって言われたし。」 「それは元からだろ。」 真面目につっこまれて、思わず笑う。 あぁ、でも本当に戻りつつあるんだよな。 あとは親だけ。 母さんを説得さえできれば、俺は胸を張って城崎に告白できる。 絶対に諦めない。 城崎も。家族も。 「綾人、良い顔になったな。」 「え?」 「表情がすげー良くなった。前向いてるって感じ。」 「俺そんなに顔に出てんの?なんか恥ず…。でも、今回こそ大丈夫だと思うんだ。」 「あぁ。もう帰って来んなよ?」 涼真の家にずぶ濡れ状態で二回も押しかけたもんな。 心配させたし、迷惑かけた。 もう同じことにはならない。 今の俺は前より強くなったから。 「うん。じゃあ明日に備えて寝る。」 「おう。ゆっくり風呂で体温めてからな?」 「はーい。」 涼真が準備してくれてた湯に浸かり、ほかほかな体で布団に潜った。 明日が楽しみで眠れないってのは、久しぶりの感覚だった。

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