715 / 1069
第715話
「ただいま〜!!」
「おー。お疲れ、綾人。」
「悪いな、こんな遅くに。」
涼真の家に帰った。
でも、涼真に迷惑かけるのも今日が最後だ。
明日、城崎との同棲生活に戻ろうと思ってるから。
……断られないよな?
待っててくれてるって、今もだよな…?
「何だよ。スッキリした顔してたと思ったのに、急に暗くなって。」
「いや、何でもない!なぁ、涼真。」
「ん?」
「俺、城崎のとこに戻る。」
「えっ?!おぉ!よかったじゃん!」
涼真は自分のことのように喜んでくれた。
本当、めちゃくちゃ迷惑かけたもんな…。
俺のために、すげぇ悩んでくれたり、色々提案してくれて…。
涼真には本当に助けられた。
「先週心療内科受けてさ、先生に色々相談したんだ。」
「よかった。いい先生だった?」
「うん。歳近いんだけど、すげーしっかりしてた。親身に話聞いてくれたし。同棲のことも、涼真が提案してくれた家庭内別居的な感じだったらオッケーもらったんだ!」
「ぷっ…(笑)家庭内別居って言ったの?」
「うん。なるほどなーって、先生感心してたよ。涼真が言ってたみたいに、少しずつ話したり触れたりして体を慣らしていけばいいって。」
「でも過呼吸なったりするのが怖いって言ってなかった?」
「薬もらったんだよ。これ飲んでから、震えとかもほとんど出なくなったんだ。」
涼真に薬を見せる。
飲みすぎないように、1日3錠七日分しか処方されてないから、あと一錠。
それに、睡眠剤は一回も使ってない。
「へぇ。これっていつまで飲むんだ?」
「急にやめたら離脱症状とかも出るらしくて、だから症状がなくなってきたら、少しずつ減らしていくんだって。」
「ほー。まぁ一生飲む必要はないんだな。」
「それは勘弁。これすげぇ眠くなるし。」
「そうなんだ?」
「副作用だから仕方ないらしいけど。それにお酒もできるだけ控えるようにって言われたし。」
「それは元からだろ。」
真面目につっこまれて、思わず笑う。
あぁ、でも本当に戻りつつあるんだよな。
あとは親だけ。
母さんを説得さえできれば、俺は胸を張って城崎に告白できる。
絶対に諦めない。
城崎も。家族も。
「綾人、良い顔になったな。」
「え?」
「表情がすげー良くなった。前向いてるって感じ。」
「俺そんなに顔に出てんの?なんか恥ず…。でも、今回こそ大丈夫だと思うんだ。」
「あぁ。もう帰って来んなよ?」
涼真の家にずぶ濡れ状態で二回も押しかけたもんな。
心配させたし、迷惑かけた。
もう同じことにはならない。
今の俺は前より強くなったから。
「うん。じゃあ明日に備えて寝る。」
「おう。ゆっくり風呂で体温めてからな?」
「はーい。」
涼真が準備してくれてた湯に浸かり、ほかほかな体で布団に潜った。
明日が楽しみで眠れないってのは、久しぶりの感覚だった。
ともだちにシェアしよう!