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第717話
一週間ぶりのクリニック。
やっぱりここは落ち着く。
匂いも雰囲気も、こういうのっていいな…。
「望月綾人さん、診察室へどうぞ。」
名前を呼ばれ、診察室へ入る。
渡瀬先生がにこやかに挨拶してくれた。
「こんにちは、望月さん。その後どうですか?」
「おかげさまで、胸がザワザワすることも減りました。相手とは言葉に詰まったりすることなく話せるようになりましたし、電話とかもしてて…。」
「それはよかったです。念のため、お薬の残数確認してもよろしいですか?」
先生に言われ、俺は残っている眠剤だけ机に出した。
処方された7錠。使うことなく残っている。
「抗不安薬は朝で飲み切りました。」
「素晴らしい。眠剤は使用せず過ごせたんですね。」
「はい。」
ただちゃんと言われた通りに薬を飲んだだけなのに。
承認してくれるって、こんなに心地良いんだ。
「あ…、先生。」
「何でしょう?」
「前に言ってた同棲…のことなんですけど…。この後、相手と会って、家に帰ろうと思ってまして…。」
「なるほど。では、抗不安薬は減量せずこのままでいきましょう。来週まで特に症状が出なければ、少しずつ減らしていきましょうか。」
「はい。お願いします。」
よかった。
言いたいことが伝わった。
前に減らしていく方向って言ってたから、今日減らされたらどうしようって、少し不安だったから。
「望月さん、くれぐれも無理はしないようにしてくださいね。」
「はい…。」
「フラッシュバックが起こらないように、Aさんとは駅などで待ち合わせして、一緒に向かうようにしてください。幸いにも今日は晴れているので、前に仰っていた"雨"の条件はありませんし。」
先生、俺が小言みたいに呟いたことまで、ちゃんと覚えててくれたんだ…。
俺のことしっかり考えて診てくれてるって思うし、先生のことすごく信用できる。
先生に任せれば、絶対に治る。
そんな気がする。
その後先生から副作用の程度や、この一週間の様子、城崎との関わりを確認された。
30分ほど話して、先生は静かにペンを置いた。
「望月さん、今回も一週間分お薬を処方しておきますから、前回同様きちんと用法と用量は守って内服してくださいね。」
「はい。」
「来週も11時の予約でいいですか?」
「お願いします。」
「では来週、またお待ちしていますね。」
「ありがとうございました。」
診察を終え、隣の薬局で薬をもらって駅に向かう。
スマホを開き、城崎の番号を押した。
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