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第718話

1コールも鳴らないうちに、城崎は電話に出た。 『先輩っ!今どこですか?!』 「ふっ…(笑)勢い凄すぎ。」 『あっ…、ごめんなさい…。で、どこにいますか?』 「今○○駅。」 『迎えにいきます。待っててください。』 「いいよ。そっちまで行く。」 『迎えに行かせてください。15分あれば着くんで!あ、切ります!』 電車のドアが開く音ともに電話が切れた。 もしかして城崎、駅で待っててくれたのかな? そうじゃないと、今俺がいる駅まで15分じゃ着かないし…。 言われた通りに駅で待っていると、改札から城崎が走ってきた。 城崎、俺がプレゼントした腕時計付けてくれてる…。 それに、お揃いのネックレスも…。 俺はあの家に置いてきてしまったから…。 「先輩っ!」 「久しぶり…でもないか。」 「久しぶりです!」 4日ぶりくらいなんだけど、城崎は今にも俺に飛びつきそうなくらい尻尾をぶんぶん振っていた。 ぎゅっと手を握られ、そこに意識が集中して熱く感じる。 「あの…、お話って…。俺の話も聞いてくれますか…?」 「うん…、聞くよ。」 「!!あのっ…、家じゃダメですか…?話すとこ…」 城崎は俺の様子を伺いながら尋ねる。 家……、うん。 帰るって決めただろ、俺。 覚悟決めろ…。 「………いいよ。」 「!!!」 「でも、一個だけお願い聞いて…。」 「お願い?」 怖い。 また前みたいになるのが怖い。 城崎を拒否してしまうことが怖い。 「俺が逃げないように、手繋いでて…?」 「も、もちろんです!!」 右手を差し出すと、城崎は両手で力強く俺の手を握った。 力強すぎてびっくりする。 「痛い(笑)」 「あっ…、すみません!つい…」 「家着くまで離さないで。」 「当たり前です。……先輩、荷物俺が持ってもいいですか?」 「いいの?」 「はい。持たせてください。」 城崎は左手で俺の手を繋ぎ、右手でキャリーケースを引き摺った。 周りの人がちらちら俺たちを見ているけど、前みたいに見られたらどうしようって気持ちは少しだけマシになった。 蛇目に俺の気持ちを肯定されて、俺は城崎との関係を守れるなら、見られてもいいって思えるようになったから。 電車に揺られている間も、城崎は俺の手をしっかり握って、離してしまう様子は微塵も感じられなかった。

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