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第724話

城崎が浴室に入ってから、また洗面所に戻ってドライヤーをかける。 さっきのトリートメント、本当にいい匂い。 乾かすとふわっと香る。 今まであんまり気にしたことなかったけど、こういうのにお金かけるのもいいかもなぁ。 鏡を見ながら髪を触っていると、浴室の扉が開いた。 「あ…。」 「?!!?!」 振り返ると素っ裸の城崎がいて、俺は慌てて洗面所から出て行った。 もう!一言声かけてくれればいいじゃんか!! 顔が熱くなって、心臓がバクバクと早鐘を打つ。 見慣れたはずの城崎の裸。 程よくついた綺麗な筋肉、男らしく浮き出た血管、綺麗な鎖骨に、健康的な肌色。 そして、どうしても目がいってしまう立派な男の象徴。 「あっつ……。」 パタパタと手で顔を扇いでいると、洗面所のドアが開く。 「ごめん、先輩。いると思わなくて…。」 「もう服着てる…?」 「うん。だから顔見せて?」 顔を上げると、心配そうに俺を見下ろす城崎と目が合う。 髪から水滴が滴って、床を濡らす。 あれ……。城崎って、こんなにエロかったっけ…。 「先輩…?」 「ね、寝る!!」 「うん…?髪乾かしたら行きますね。」 「いや、俺はソファで寝るから!城崎は寝室使っていいよ。じゃ、おやすみ!」 「待って。」 逃げるように背を向けると、手首を掴まれて後ろに体を引かれる。 城崎の胸の中に背中から飛び込むみたいな体勢になってしまった。 「な…に……?」 「一緒に寝るのもダメなんですか?」 「…………しばらく。」 「まじか。」 こんな調子で一緒に寝るとか、俺の心臓がもたない。 というか、城崎と那瑠くんが愛しあったかもしれないベッドで寝るとか、普通に無理だ。 いや、でもソファで致した可能性は…? ダメだ。どっちも無理だ…。 「俺がソファで寝るから、先輩は寝室使って?」 「……無理。」 「なんで?」 「だって…!………なんでもない。」 城崎が那瑠くんを家にあげなかったって嘘ついたのは、隠したいからなんだよな…? なのにこれ以上聞いても、答えてくれるわけない…。 「自分の部屋で寝る…。」 「マットレスないし、体痛くなっちゃいますよ。」 「いい。明日買いに行く。おやすみ。」 「先輩っ…!」 俺は部屋に入って鍵を閉めた。 薬を飲んでるのに、こんなにざわざわするなんて…。 全然寝付ける気がしなくて、俺は初めて睡眠導入剤を飲んで眠りについた。

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