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第727話
お昼からはショッピングモールに行って、マットレスを買った。
本当に安いものでよかったのに、城崎は自分が出すからと言って、通気性が良くてフカフカの高いマットレスを購入した。
今日中に届けてくれるらしい。
「城崎、俺出すよ…?」
「いいんです。俺のわがままだから。」
「ていうか、こんないいマットレス買ったら、戻れなくなっちゃうけど…。」
「はっ?!」
城崎は盲点だったと言いたげに、ショックそうな顔で俺を見た。
思わず吹き出してしまう。
「嘘だよ。」
「本当…?一緒に寝てくれますか…?」
「すぐには無理だけど…。」
俺だって、城崎と寝たくないわけではない。
あの家から那瑠くんが出てきた事実が、頭から離れないだけ。
半裸なんかで出てきたら…、どうしても嫌な想像をしてしまう。
「早く先輩を抱きしめて寝たいな…。」
「………。」
「ごめんなさい。今は無理って言ってるのに、こんなこと言ったら先輩困っちゃいますよね…。」
城崎はしょんぼりした顔でそう言った。
困るけど…、でも嬉しい。
言われても応えられないくせに、城崎の言葉ばかり求めてしまう俺はきっと残酷な人間だ。
城崎は俺に拒否ばかりされて、一緒にいて辛くないんだろうか。
俺なんかと一緒にいて、楽しいんだろうか。
暗くなってしまった雰囲気を元に戻そうと、城崎は話題を変えた。
「先輩、マットレスの感想教えてくださいね?気持ちよかったら、二人のベッドもこのマットレスに買い替えましょうよ。」
「ダブルベッド用って高いんじゃないの?」
「俺が出します。」
「気持ちは嬉しいけど、こういうときのために共有口座作ったんじゃないのか?」
「でも俺のわがままだし…。」
「いいよ。俺も寝るベッドなんだから。」
何気なくした返事が嬉しかったのか、城崎はパァッと表情を明るくした。
久しぶりに城崎とする買い物…。というか、これはデートになるのか?
一緒にいれることが嬉しくて、楽しい。
どうしてこんなにも好きなのに一ヶ月も離れていられたんだろうとか、自分でも不思議なくらい。
手を繋ぎたいけど、こんなに避けてるくせにダメかな?とか、城崎からは繋ぎにくいかなとか、いろんなことが頭を巡る。
迷って手を伸ばしたり引っ込めたりしていたら、ちょん…と指先と指先が触れ、城崎が俺の手元を振り返った。
不思議そうな顔をしていたが、俺の赤くなった顔を見てにこりと笑う。
「先輩、手繋いでもいいですか?」
優しく幸せそうに俺に笑いかける。
小さく頷くと、城崎は俺の手を優しく握った。
緊張と恥ずかしさで手汗が出て恥ずかしいけど、この手を離したくない。
「今日のごはんは何にしようかな。天ぷらとかどうですか?」
「うん。天ぷら好き。」
「奮発して海老多めにしちゃお〜っと。天丼にします?」
「いいね。楽しみ。」
残りの買い物を終え、一緒に二人の家へ帰った。
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