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第729話

寝付けないまま朝がきた。 頭がぼーっとする…。 リビングに入ると、城崎は既に起きていて弁当を作ってくれていた。 「おはよう…。」 「おはようございます…。」 挨拶は返してくれるけど、空気は重い。 不安が募って、息が乱れそうになる。 逃げるようにリビングを飛び出し、薬ケースから抗不安薬を取り出して飲み込んだ。 徐々に気持ちが落ち着いて、呼吸も落ち着いた。 いつもなら城崎が心配して後ろから追いかけてきそうなのに、それすらもない。 一体俺の何に対して怒っているんだろう? 最低限の会話しかしてくれない城崎に、どんどん不安が募っていく。 やっと元に戻れると思ったのに。 「……ご馳走様でした。」 「先輩、まだ残ってる。」 「……………」 「……美味しくなかった?」 不安そうに聞かれて、首を横に振る。 美味しいに決まってる。 だけど、前と同じように全然食べ物が喉を通らなかった。 これ以上食べたら、全部戻してしまいそうだ。 怒ってるくせに、朝からフレンチトーストとかサラダとか作ってくれて、優しいのかなんなのか分からない。 あくまで俺が健康的に過ごせるように世話は焼いてくれるってこと? 俺は城崎が今までみたいに全身で俺を好きだって伝えてくれたら、それだけで食べられるし、眠れる。 でも、俺が怒らせてしまったんだよな、きっと…。 何度出張のことを思い出しても、記憶が曖昧なのは蛇目と飲んだ後だけだ。 やっぱりあの時何かあったのか…? 職場に着いて、真っ先に蛇目の元へ向かう。 蛇目はまるで俺が来ることをわかっていたかのように、会議室へと誘った。 「主任、おはようございます。」 「おはよう…。なぁ、俺とおまえって何かあった?」 「何かとは?」 「出張の日…。俺、飲んであんまり記憶なくて…。俺、一人で部屋に帰ったんだよな?」 「はい。」 「じゃあ何で……」 他に思い当たる節が見つからない。 やっぱり一緒に飲んだのがダメだったのか…。 あんなに怒るほど? 「城崎くんと何かあったんですか?」 「っ…!なんで…」 「主任が浮かない顔をされている時のほとんどが、城崎くん関連ですからね。」 バレバレすぎて恥ずかしい。 あーもう…。 こんなすぐにバレるくらいに好きなのに、どうしてうまくいかないんだよ…。 帰ったら謝ろう。 一緒に飲んで悪かったって。 蛇目と飲んで、城崎に嫌われるくらいなら二度と飲まない。 城崎と蛇目どっちを取るかなんて、そんなの明白じゃないか。

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