731 / 1069
第731話
「ごめんっ…!ごめんなさい…。」
「………どれくらい飲んだんですか。」
「…!!」
城崎はまだ俺を許そうとしてくれてる。
でも…。
記憶がない。
こんなこと言ったら、怒られる…。
でも嘘ついたら…?
城崎に嘘なんてついてもすぐに見抜かれるし、それこそ余計に幻滅されてしまうんじゃ…。
「…………」
「言えないんだ?」
「……一杯だけ。蛇目が注文してくれたカクテル。……度数高くって…、あんまり記憶なくて…。」
「…………」
正直に話した。
城崎はため息をついて黙ってしまった。
やっぱり呆れられた。
そりゃそうだろ。何回目だよって感じだよな…。
「…俺、その後ちゃんと一人で部屋戻ったらしくて。ちゃんと部屋で寝てたし…。だから、城崎が心配するようなことないから…!」
「それ、蛇目さんに聞いたんですか?」
「え?」
「あの人の言うこと信じてるんですか?」
「何?どういうこと…?」
城崎は何か知ってるのか?
俺は一人で部屋に戻ったんじゃないのか?
分からない。
教えてほしいのに。
「もういいです。」
「城崎っ…!」
「疲れたんで寝ます。先輩は作り置きしてるもの、適当に食べててください。おやすみなさい。」
城崎は自分の部屋に入ってしまった。
カチャン…と鍵を閉められる。
城崎に心まで閉ざされたような気持ちになった。
城崎もこんな気持ちだったのか?
「城崎…、ごめん。ごめんなさい…。」
ドアに触れて、中にいる城崎に話しかける。
「もう飲まない…。ごめんなさい。許して……。」
「…………」
「言い訳になるかもしれないけど、あの時嬉しかったんだ…。あいつが俺と城崎のこと肯定してくれたから…。これからは気をつけるから…。だから……。」
ボロボロ涙が出る。
城崎に捨てられたら、俺はもう生きていけない。
愛されたい、愛したい。城崎だけに、城崎だけを。
言い訳してでも何でもいいから、許してほしかった。
「先輩…、そんなとこいたら風邪引くから…。」
「城崎…っ!」
ガチャ…とドアが開いて、眉を下げた城崎が現れる。
しゃがみこんで、俺と目線を合わせてくれる。
抱きしめられて、背中をゆっくりと摩られる。
「また息乱れてますよ…。ゆっくり息して…?」
「うん……」
落ち着く…。
前までは過呼吸を誘発していたはずの城崎が、今じゃ俺の安定剤みたいだ。
だって、本当は俺にとって城崎は必要不可欠な人だから。
当たり前といえば当たり前だ。
ともだちにシェアしよう!